●3つの注目ポイントは企業業績、企業改革、賃金であり、現時点で企業業績は株価の支援材料。
●企業改革は東証が取り組み開示企業名を公表へ、賃金は来年3月の春闘集中回答日が焦点。
●業績の底堅さの維持と企業改革の進展、賃上げ継続で、日経平均は年度内に34,500円台へ。
3つの注目ポイントは企業業績、企業改革、賃金であり、現時点で企業業績は株価の支援材料
今回のレポートでは、日本株の先行きを展望するにあたって、注目しておきたい3つのポイントについて解説します。具体的に、3つのポイントとは、「企業業績」と「企業改革」、そして「賃金」です。いずれもこの先、改善傾向が確認されれば、日本株にとって強い追い風となるため、一段の株高も期待されます。以下、それぞれについて、現状と今後の焦点をまとめます。
はじめに、企業業績については、先般の3月期決算企業の中間決算が総じて良好だったことや、企業自身による2023年度の業績予想が増収増益となったことは好材料です(図表1)。なお、市場の関心はすでに2024年度の業績に移行しつつありますが、市場が予想する東証株価指数(TOPIX)構成企業の12ヵ月先予想1株あたり利益(EPS)は、引き続き増加傾向にあり、現時点で企業業績は株価の支援材料と考えられます。
企業改革は東証が取り組み開示企業名を公表へ、賃金は来年3月の春闘集中回答日が焦点
次に、企業改革については、3月31日の東京証券取引所(以下、東証)の要請に基づき、企業は資本効率の改善に取り組み始めています。ただ、東証が8月29日に発表した調査資料によると、企業による取り組みの開示はまだ少ない状況です(図表2)。そこで東証は今月、改めて調査を実施し、2024年1月15日に株価純資産倍率(PBR)の改善対策などを開示した企業の名前を一覧表で公表する予定です。
そして、賃金については、労働団体の「連合」が12月1日、2024年の賃上げ要求水準を「5%以上」にする方針を正式決定し、2023年の「5%程度」より表現を強めました。しかしながら、具体的な賃金上昇率がみえてくるのは、2024年3月中旬頃の春季生活闘争(春闘)の集中回答日を待つことになります。2023年の平均賃上げ率が3.58%でしたので、賃上げ継続の判断は、これが1つの基準になると思われます。
業績の底堅さの維持と企業改革の進展、賃上げ継続で、日経平均は年度内に34,500円台へ
弊社は2024年度の企業業績も底堅く推移すると予想していますが、業績が影響を受けやすい円相場や米中景気の動向などには注意が必要です。企業改革については、前述の通り2024年1月15日に東証の要請への取り組みを開示する企業名が公表され、一定程度の進展が確認されるとみています。そして、賃金に関し、来年の平均賃上げ率は今年に近い数字となり、賃上げ傾向が続く可能性が高いと考えています。
なお、日経平均株価をテクニカル分析でみると、10月にダブルボトムを形成した後、11月にネックラインを突破し、株価上昇が示唆されています。上値目途は、ダブルボトムとネックラインの値幅の約2,000円をネックラインの水準に加えた、34,500円台です。あくまで、1つの目安ですが、企業業績の底堅い見通しに変化のないまま、企業改革の進展と賃上げ傾向が確認された場合、2023年度内の到達は、それほど難しくないと思われます。
(2023年12月5日)
※当レポートの閲覧に当たっては【ご注意】をご参照ください(見当たらない場合は関連記事『日経平均株価、23年度内に「34,500円台」到達の可能性も…日本株を展望する上で注目したい「3つのポイント」【ストラテジストが解説】』を参照)。
市川 雅浩
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
チーフマーケットストラテジスト
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