後期高齢者医療制度とは
まず、後期高齢者医療制度とはどのような制度か、説明します。
後期高齢者医療制度は、75歳以上の人(後期高齢者)等の医療費の自己負担額を制限するものです。
もともとは健康保険制度で他の世代とともに包括的にカバーされていましたが、2008年から、75歳以上を切り離して独立した制度として行われています。
現行制度では、自己負担割合は原則として「1割」ですが、現役並みの所得を得ている人など、所得が高い場合は「2割負担」「3割負担」になります。
自己負担額を超える部分の額は、現役世代の健康保険制度(国民健康保険、被用者保険)からの「支援金」が約4割、公費が約5割拠出されています。つまり、現役世代が財政支援を行う形がとられているのです。
後期高齢者医療制度の保険料の額は、以下の2つから構成されています。
・均等割:原則として被保険者全員が均等に負担する(単位:円)
・所得割:所得に応じて負担する(単位:%)
まず、「均等割」は、原則として被保険者全員が均等に負担し、所得が低い人は軽減されます([図表1]参照)。
これに対し、「所得割」は所得に応じて負担割合が高くなっていきます。
2023年度の全国平均保険料率は「均等割」が 47,777円、「所得割」が 9.34%となっています。保険料には上限が設定されており、2023年時点では年66万円です([図表2]参照)。
来年度からの「保険料引き上げ」も決まっている
今回、発表されたのは、後期高齢者医療制度の自己負担割合を「原則2割」つまり、現行の2倍に引き上げることです。そして、これは少子化対策の財源確保が目的とされています。
しかし、これとは別に、既に2024年からの保険料の引き上げが決まっています。
すなわち、「所得割」の額が「所得割」の額が年収153万円以上の人について2025年までに引き上げられることになっています。
また、前述したように、保険料には現状、66万円の上限額が設けられていますが、その上限額も2024年は年73万円、2025年度以降は年80万円に、段階的に増額されることが決まっています([図表3]参照)。
これには、以下の2つの意味合いがあります。
・後期高齢者医療制度における現役世代の負担(4割)をこれ以上増やさない
・引き上げられた分の一部を出産育児一時金の財源に充てる
第一に、現役世代の負担をこれ以上増やさないためということです。社会の高齢化に伴って医療費が今よりさらに増大することが予測されるなか、後期高齢者医療制度における現役世代の負担を、現状よりもさらに大きくするのは酷だという考慮によるものと考えられます。
第二に、後期高齢者医療制度の保険料の引き上げに伴い、その一部が「出産育児一時金」の財源に充てられることになっています。
出産育児一時金は、女性が出産した際に、74歳以下の世代を対象とする健康保険制度(国民健康保険、被用者保険)から子1人につき50万円を受け取れる制度です。2024年以降は、その財源の一部を後期高齢者医療制度からも負担してもらうことになっているということです。
後期高齢者医療制度の保険料引き上げと、自己負担割合の引き上げは、いずれも、世代間の負担の公平をはかるという方向性の制度改定だといえます。