定年後のお金と生活に関する組み合わせは無限
50代に入ると、資産形成の目的は自らの老後資金準備に重点を移していくということになるかと思います。そして50代になると、将来もらえる年金や退職金などもおおよその金額を把握が可能で、老後のお金の“見える化”がしやすくなります。
実際に収支のキャッシュフローを作ってみると、いくら長生きしても支払われ続ける公的年金が、老後生活を支える最も大きな柱であることが分かります。
2004年に決まったマクロ経済スライド(現役世代の人口減少や平均余命の伸びを踏まえて年金給付の伸びを抑制する仕組み)による調整が当面はあるものの、今後インフレになっても物価・賃金にある程度連動するので安心です。
ただ、その公的年金を受け取るまでのつなぎ、あるいは年金に上乗せして余裕のある老後生活にするためのお金が必要です。
この不足分を補う「融通が利くパズルのピース」を準備するために、税制優遇があるNISAやiDeCoを活用して資産をつくり、老後に取り崩して使っていくということになります。
いつ、どれくらい使うかをある程度イメージしながらお金を準備すれば、目標に到達した時点で安心が得られます。では、具体的にどうすればいいか。現役時代の生活と違って、60歳以降の生き方や働き方は様々です。
何歳まで働くのか、公的年金を何歳から受け取り始めるのか、退職金や企業年金がある場合にその受け取り方はどうするか、など、定年後のお金と生活に関する組み合わせは無限にあります。
多くの人は、何が一番いいか? とか、どうすれば一番得か? という答えを欲しがりますが、人によって異なるので唯一絶対の正解というものはありません。
公的年金を受け取るまでの穴を埋める
また、すべてにおいてパーフェクトなプランというものはなく、何かを選択すればそれ以外の何かは諦めなければなりません。もろもろ考えた上で、自分にとって最も満足で納得のいくパズルを組み立てることが必要なのです。
例えば公的年金の受給開始を70歳まで遅らせて、受給額を65歳から受け取り始めるよりも42%増やすというのは、老後の暮らしを安定させて長生きリスクに備えるにはとてもいい方法なのですが、そのためには70歳まで公的年金を受け取らなくても済むように自己資金を手当てする必要があります。
70歳までフルタイムに近い働き方ができればそれが一番いいのでしょうが、もし65歳で完全にリタイアするのであれば、その後の5年間の生活を賄うための資金は用意しておかなくてはなりません。その最も有力な手段はiDeCoでしょう。
同様に60歳で完全に仕事を引退する場合は、公的年金の受給開始年齢である65歳までの5年間の生活費が必要になります。もちろん公的年金を繰り上げて60歳から受け取ることも可能ですが、その場合は受給額が最大で24%減りますから、暮らす上で上乗せする資金が必要になるかもしれません。こういった埋めるべき穴の部分を補うためのピースとして、NISAやiDeCoを活用するのが基本となります。
もちろん、現在ある資産や将来受け取れる年金、退職金で老後の暮らしは安心だという人は、ぜひ人生100年を豊かに楽しむためのお金をiDeCoやNISAで育ててください。大きく育てば、大きな楽しみが待っていますから、ワクワクしますね。
大江 加代
確定拠出年金アナリスト
株式会社 オフィス・リベルタス 代表取締役