さまざまな時代の波をくぐり抜けてきた「団塊の世代」
団塊の世代とは、戦後の1947年から1949年、第一次ベビーブームに生まれた人々です。この世代は、昭和の高度経済成長やバブル期、平成不況など、さまざまな時代の波をくぐり抜けてきた人々ですが、方々も、2025年には全世代が75歳に達し、後期高齢者へと突入します。
ひるがえって、現在の日本は人類史上初となる少子高齢化社会を迎え、30年間にわたり国民の給料が上がらないという厳しい状況です。後期高齢者となる団塊の世代の方々のこれからの老後生活はどうなっていくのでしょうか。この世代の方々が予想していた老後生活と比較しながら見ていきましょう。
バブルは謳歌したものの、初任給は意外と少なかった団塊世代
いま、日本が直面している「2025年問題」ですが、これは先にも触れた、団塊の世代の全員が75歳に達することで、社会保障費の増大が懸念されるという問題です。
後期高齢者が増え、医療費や介護費の増大が確実になる一方で、それを支える若年層が減少していることから、従来の社会保障制度の破綻が不安視されています。
若い世代の方々からすると、団塊の世代は恵まれた時代に生まれ、おいしい思いばかり…という印象があるかもしれませんが、実情は少し違っているようです。
団塊の世代の方々の世代の大卒の初任給は、現在の価値に換算すると14万円から16万円程度で、現在の初任給の状況と比べても、かなり低かったことがわかります。
しかし、そんな社会人スタートだった団塊世代も、バブル景気のころは華やかな生活を送っていました。1万円札をヒラヒラとさせてタクシーを止める姿は、一部の歴史の教科書に掲載されているとも聞きますが、いまや笑い話です。
なおバブル以降、会社員の平均年収は景気の波によって上下しています。1990年には公定歩合の引き上げや湾岸戦争などにより株価が暴落し、会社員の平均年収も落ち込み、現在の不況に至るまで緩やかな下落が続いています。
老後資金を貯める段になり、「給与減」という状況に直面
団塊の世代はバブル景気を経験するなど恵まれた側面もありますが、残念ながらそのまま逃げ切ることはできませんでした。いざ老後資金を貯めようとしたときには、初の給与減という状況に直面します。
厚生労働省の調査によると、当時の50代の男性は、92%が収入を得る仕事をしており、そのうちの55%が正規雇用の従業員、20%が自営業者、7%が会社役員でした。また、30%の人がひとつの企業で20年以上勤務し、さらに16%が同じ分野の仕事に20年以上従事していました。つまり、団塊の世代の男性は、長期間同じ職場で働いてきたことがわかります。
団塊の世代の人々が50代の頃は、60歳から64歳の定年直後のイメージとして「仕事で収入を得る」と回答した人が66%でしたが、一方で、65歳になって「公的年金を頼りたい」と考える人は69%と逆転していました。つまり、「65歳以降は公的年金を頼る」と考える人が多かったということです。
しかし、団塊世代の方々が70~74歳になった時点での追跡調査では、約半数が「仕事をしている」と回答。正規雇用の従業員として働いている人は4%、パート・アルバイトとして働いている人が16%、自営業者は13.1%と、70歳を超え、かなりの方々がなお就労を継続しています。
そのうえで、「これから先も仕事を続けたいか」という質問をしたところ、39%の人たちが「仕事をしたい」と回答していますが、その理由の51%が「生活費を稼ぐために仕事をしなければならない」というものであることから、仕事に対する前向きな気持ちからの就労でないことは明らかです。団塊の世代の多くの方々は、年金だけで老後生活を送ることができない状況に陥っていることが見えてきます。
厚生労働省によると、70歳でもらえる平均的な厚生年金の金額は月額14万7000円です。これでは生活費として十分とはいえません。多くの70代の方々が「生活のために働く」という選択をすることも、致し方ないといえるでしょう。
これから後期高齢者となる団塊の世代の人たちは、この状況こそが老後生活の現状だと、若い世代に身をもって教えてくれているのだといえます。
そのことを踏まえれば、老後に備えて資産運用を行うことが重要です。将来のためにも、早めに行動する必要があるといえます。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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