正社員と非正規社員の給与格差、一番大きいのは氷河期世代
厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査』によると、大卒サラリーマン(正社員)の平均給与は月収で40.0万円、年収で658.4万円。20代前半で月収23.5万円、年収348.6万円だった給与は、年齢を重ねるごとに上昇し、50代後半で月収52.5万円、年収857.6万円でピークに達する。
一方、大卒の非正規社員の平均給与は月収で28.9万円、年収で418.5万円。20代前半で21.4万円、年収293.8万円という給与も、50代でなお月収30万円に届かず、年収は50代後半にしてやっと400万円台へ。
40代後半正社員の平均年収は756.4万円だが、40代後半非正規社員の平均年収は352.5万円と、正社員の46%。
50代正社員は年収832.7万円だが、50代非正規社員の平均年収は364.8万円。40代後半よりも低い、正社員の43%だ。
正社員と非正規社員の給与差がいちばん広がる40代後半~50代前半は、氷河期世代に該当する。
勝ち組としての自負が、若手世代への圧力に!?
世間で「就職氷河期」といわれる彼らは、バブル崩壊後の1993年から2005年に大学等を卒業し、きわめて厳しい就職活動を繰り広げた世代である。2023年現在、彼らは40代~50代前半となっている。とくに就職が厳しかったのは2000年で、大卒の求人倍率が唯一、1.0を切った年でもあった。
当時の大学4年間の学費は、国公立大学で約250万円、私立大学では文系が約400万円、理系で約550万円。下宿すれば仕送りも必要となり、親の負担は相当に大きい。奨学金を借りた場合は大学を卒業後に返済がスタートし、月平均1.5万円ほどの返済が長期にわたって求められる。
そのような点から、大卒後に無職となることはなんとしても回避したく、非正規でも臨時職員でも、とにかく就職できる先を必死で探したという実情があった。
しかし、必死だったのは当事者だけだったのかもしれない。氷河期世代が就職にあぶれ、正社員になれずに低賃金のまま働き続けても、あるいは、ブラック企業で過酷な就労環境に置かれ心身をさいなまれていても、世間はどこか他人事だった。氷河期世代の問題が、将来の日本に深刻な影響を及ぼすことになるとは想像できなかったのだろう。
そんな氷河期世代がクローズアップされるようになったのは最近のことだ。40~50代になっても厳しい状況に置かれる氷河期世代の人への支援の必要性が叫ばれるようになったことが理由である。
一方で、そのような苛酷な状況にありながら、狭き門を通り抜けて出世街道を勝ち進んだり、起業して成功をつかんだりした「勝ち組氷河期」もいる。
勝ち組氷河期は、これまでにない苛酷な状況を勝ち残ってきたことから、自分に自信もあり、他者にたいしてかなりシビアな傾向があるようだ。
40~50代のベテランとなった彼らは容赦ないと、若手従業員からはため息が漏れる。
――なぜできないんだ?
――たいしたことないだろう?
部下や後輩たちに高い要求を平然と突き付け、そして、
――いまの若い奴は、楽でいいよな。
――おれたちは本当に大変だったんだぞ?
と、平然と口にする。
日々の業務のなかで、これがたびたび繰り返されるのだ。
世の中の状況が持ち直してから就職活動し、入社してきた「氷河期以降」の社員たちは、この上司たちの価値観とのギャップに戸惑いを隠せない。
そんな彼らは、表向きは上司を立てて従順にふるまっていたとしても、心のうちは複雑だ。
都内のシステム開発会社に勤務する、30代になったばかりという男性はいう。40代後半の上司の下で働いているが、容赦ない無茶ぶりとキツい口調で、かなりパワハラ気味だという。
「とても大変ななか、奮闘されたのだろうな、とは思っています」
「ですが、自分たちの世代がいちばん大変で、ほかの人たちはラクをしてきた、という前提で物事を見るのは、ちょっと納得できないなと…」
氷河期か、もしくはそれ以外か。若い時代をどのように過ごしたかによって、物事の見え方にも差があるようだ。若手社員が氷河期世代の心の内を汲むように、「頑張ってきた」という自負のある氷河期世代も、若い世代に少しマイルドな対応をした方が、バランスがいいのかもしれない。
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