専用口座での株の運用益が非課税に
2014年の1月より、「NISA(ニーサ・少額投資非課税制度)」の導入が開始されました。そもそもは、英国で普及している「Individual Savings Account(ISA・個人貯蓄口座)」を参考にしており、当初「日本版ISA」と呼ばれていましたが、途中からNISAの愛称がつきました(ちなみに「N」はNIPPONの頭文字です)。
ニーサ、ニーサとテレビCMでもニュースでも雑誌でもバンバン喧伝されていたのでご存じの方も多いと思いますが、NISAは運用による利益が非課税になる制度です。より正確にいうと、銀行や証券会社にNISA口座という専用口座を開設し、そこでの投資について、運用益が非課税になります。
たとえば、50万円を株式投資などで運用し、10万円の利益が出た場合には、通常であれば利益に対して20%の課税(2万円)がなされるのですが、NISA口座に預けたお金で運用したのであれば税金がゼロになるのです。
それはいい! と早速始めようとした方は、ちょっと待ってください。きちんと制度を理解しておかないと、トクをするどころか損をしてしまう可能性もあります。
知っておいていただきたい制度の概要は、簡単にまとめると次のとおりです。
●新規で購入した上場株式や株式投資信託等から生じる譲渡益、配当・分配金が非課税
●非課税期間は投資開始年を含めて5年間
●非課税枠は毎年100万円の元金まで
●投資できる期間は2014年から2023年までの10年間
●日本に居住している20歳以上の人が利用できる
●NISA以外の口座における金融商品とは切り離して考えるので、損益通算ができない
●NISAで投資した商品を途中で売却しても、その分の非課税枠は復活しない
あまりNISAの予備知識のない方には、やや難しかったでしょうか。要点をまとめると、NISAでは「債券への投資」「元金100万円を超える分の投資」は非課税にならず、「投資後10年以上経過した商品」については、自動的に課税口座に移されるということです。
10年経つ前に売却しないと非課税メリットを受けることはできません。課税口座に移されてしまうと、売却時には課税されて運用益から約20%の税金が差し引かれます。
NISAのパンフレットなどを見ると、とにかく運用益が非課税になるおトクな制度のように思えますが、実際にはこのような制限があり、単純にトクするだけではないということは、知っておいていただきたいと思います。
デメリットも理解した上で投資判断を
NISAの導入自体は、もちろん悪いニュースではありません。一部とはいえ、投資の運用益が非課税になるのはありがたいことです。
しかし、だからといって誰でもかれでも投資すべき――というような風潮には大反対です。政府主導でNISAの大々的なキャンペーンが行われているおかげで、「NISAって、やっておかないと損をするの?」と思っている人も多いようにお見受けしますが、必ずしもそうではありません。
NISAのおもなターゲットは株や株式投資信託といった、元本割れの可能性も大いにあるリスク商品なので、迂闊に投資をすれば、むしろ損をします。
元本割れしたままNISAの非課税期間の期限(10年)が来た場合、前述のように、自動的に課税口座に移管されます。もし、100万円で買った株が70万円まで値下がりした状況で移管したら、そこから90万円まで値上がりした時点で売却しても、税金がかかります。
損失が出ているのになぜ課税されるかといえば、課税口座に移管した時点の株価(70万円)よりは利益が出ていると見なされるからです。投資で損をしたうえに、税金までとられてしまう……泣きっ面に蜂、弱り目にたたり目、まさに踏んだり蹴ったりです。ですからNISAで投資をする際には、よくよく注意しなければならないわけです。
皆さんも、そうしたNISAのデメリットを知って、勢いで投資してしまわないように心がけてください。
※NISAに関する情報は2014年6月現在のもの。今後、課税期間が延長されるなど、制度変更が行われる可能性もあります。