「企業版ふるさと納税」は“税金が90%軽減”なのに「節税」にならない?個人との違いと「意外な活用メリット」【税理士が解説】

「企業版ふるさと納税」は“税金が90%軽減”なのに「節税」にならない?個人との違いと「意外な活用メリット」【税理士が解説】
(※画像はイメージです/PIXTA)

近年、個人向けの「節税」として「ふるさと納税」が注目を集めていますが、企業を対象とした「企業版ふるさと納税」という制度もあります。名前が似ており、税負担が軽減される点も共通しますが、制度内容と活用メリットがいずれも異なります。個人との違いと、企業にとっての活用メリットについて、税理士の黒瀧泰介氏(税理士法人グランサーズ共同代表)が解説します。

税負担が9割軽減される?「企業版ふるさと納税」のしくみ

◆企業版ふるさと納税とは

企業版ふるさと納税は正式名称を「地方創生応援税制」といいます。企業が自治体に寄付をすると、その年度の税金額が軽減される制度です。寄付の対象は、地方自治体が実施する「まち・ひと・しごと創生寄附活用事業」(地方創生事業)です。

 

寄付金額は10万円以上、上限額は「事業費」の範囲内です。また、以下の自治体への寄付は対象となりません。

 

・本社の所在地の自治体

・東京都(地方交付税の「不交付団体」の「都道府県」)

・地方交付税の「不交付団体」で三大都市圏の「既成市街地」等に所在する市区町村

 

企業版ふるさと納税を募集している自治体と、各自治体が行っている「地方創生事業」の内容については、「企業版ふるさと納税ポータルサイト」を確認してください。

 

◆企業版ふるさと納税の「税負担軽減効果」

企業が地方創生事業への寄付を行うことによって、以下の2つの税負担軽減効果があります(なお、詳しくは後述しますが「節税」とは異なります)。

 

【ふるさと納税の2つの税負担軽減効果】

・寄付額の全額を会社の経費(損金)に算入できる

・寄付額の最大60%の「税額控除」を受けられる(法人税等の額から控除される)

 

なお、「企業版ふるさとチョイス」のHPではこれらの効果について「寄付額の税額控除が最大9割」と説明しています。この説明は法人税等の実効税率が30%のケースを前提としています。損金算入により30%の税額が軽減されることと、60%の税額控除を受けられることを合わせて「最大9割」と表現しているのです。

 

「税額控除」を受けられる内訳は、以下の通りです。

 

・法人住民税:寄附額の40%(法人税割額の20%が上限)

・法人税 法人住民税で40%に達しない場合、その残額(法人税額の5%が上限)

・法人事業税 寄附額の2割を税額控除(法人事業税額の20%が上限)

 

個人版のふるさと納税との大きな違いは「返礼品」を受け取れないということです。自治体が返礼品を出すこと自体が禁止されているのです。

 

個人の場合、大多数の人は、返礼品を目当てにふるさと納税を行っているというのが実情です。ところが、企業版ふるさと納税の場合、そのメリットがまったくないということになります。

 

企業版ふるさと納税の場合、個人とはまったく異なるメリットを見出して行うことになります。その内容については改めて後述します。

 

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