「人生の最期をどこで迎えるか」という大問題
公益財団法人 日本財団『人生の最期の迎え方に関する全国調査』によると、自身が最期を迎えたい場所として最多は「自宅」の58.8%だった。年齢別にみていくと「67~71歳」で58.0%、「72~76歳」で56.7%、「77~81歳」で62.6%となっている。
また、最期の場所として避けたい場所として最多だったのが「子の家」で42.1%、「介護施設」が34.4%となっている。介護施設を避けたいと考える人は、「67~71歳」で28.8%、「72~76歳」で36.1%、「77~81歳」で40.4%と、年齢が上がるにしたがって上昇傾向だ。
当然だが、年を重ねるごとに健康リスクは高まっていく。75歳以上なら3割が、85歳以上になると6割以上が要介護認定となる。
介護が必要になれば、まずサポートするのは家族だろう。厚生労働省『令和4年国民生活基礎調査』によると、介護人の45.9%が同居する家族であり、「同居する配偶者」が全体の22.9%、「同居する子ども」が全体の16.2%を占めている。配偶者を亡くしている場合は、子へ負担がかかっていると予想される。
要介護度だが、軽ければ日常に少し手を貸す程度だが、要介護度3になれば、介護時間は「ほとんど終日」が31.9%、「半日程度」が21.9%と、介護者は多くの時間を割くことになる。要介護度4では「半日以上」が6割、要介護度5では8割に達する。つまり、介護者は付きっ切りとなり、就労している場合は、退職を余儀なくされる。
「うちの家計から15万円もの費用は…」
年齢を重ねると、親のほうが子どもへ迷惑をかけることを懸念して、自ら率先して施設入所を望むケースも増えているようだ。
世田谷区在住の70代の山田さん(仮名)は、施設に入所していた90歳の母親を亡くしたばかりだという。
「母は80代後半になってもシャンとしていて、子どもたちの手を借りることもなく1人暮らしをしていました。ところが、私の兄が急死したのです。子どもが先立ってショックだったのでしょうね、すっかり弱ってしまって…」
長男を亡くした母親からは笑顔が消え、めっきり弱ってしまった。
「私のところは、子どもが独立して夫婦2人だったので『一緒に暮らしましょうよ』と母に声をかけたのですが、「面倒をかけるのは忍びない」と、首を縦に振りませんでした」
山田さんの母親は施設に入所すると、ろうそくの火が消えるように亡くなってしまったという。
「うちは父親が経営者だったので、母にも十分な資産がありました。でも、子どもたちの手を煩わせることもなく、ひっそり亡くなってしまって…」
一方、80代の母親を見送ったという横浜市在住の50代の鈴木さん(仮名)は涙をにじませる。
「私は二人姉妹の姉なのですが、妹も私も家庭の事情で、急に要介護となってしまった母親を引き取れず、やむなく施設へ入所させたのです」
鈴木さんの母親が入居した施設は、入所金がおよそ300万円、実費を含む毎月の請求は25万円強だった。
「母の施設入所が決まったとき、今後の費用をねん出するために急いで実家を売却しました。父親の残した貯金と合わせて2,000万円あったので、まず大丈夫だろうと思っていたのです」
母親の年金はおよそ10万円。そのため、毎月の請求を支払うために、母親の貯蓄を毎月15万円取り崩していた。
「最初は妹と2人〈これで安心ね〉と喜んでいました。ですが…」
そのうち、母親の貯金が底をつくのではないかと不安が募ってきたというのだ。
「うちの家計から15万円もの費用は捻出できません。妹夫婦は自営業なので、さらにうちより大変で…」
結局、施設からの請求を鈴木さん姉妹が支払うことにはならず、正直安堵したという。だが、〈費用が予算内で収まりますように〉という気持ちは、イコール母親の死期について思いをはせることであり、そのときの自分を思い出すと、いまも自責の念で呼吸が苦しくなると、鈴木さんはいう。
「妹も同じ気持ちだと思います…」
老人ホームへの入居として、まず必要となるのが入居一時金である。家賃の前払いのようなもので、金額はゼロ円~億単位と幅が大きい。一般的には300万~1,000万円程度というケースが多い。
入居後にかかるのが月額利用料だ。施設ごとに含まれているサービスは異なるので、それ以外を利用する場合は別途実費分の請求がある。月額利用料は平均15万~20万円程度で、別途2万~3万円程度、実費が請求されるというのが一般的だ。
厚生労働省の調査によると、厚生年金受給者の平均年金受取額は、併給の国民年金と合わせて、65歳以上男性で17万円、女性で11万円。理想は月額利用料を毎月の年金のなかで納めることだが、なかなか難しい。
理想としては、子どもに不安な思いをさせないよう、自分の老後資金や介護費用をしっかり準備しておくことだ。家族がいないおひとり様の場合も、不本意な老後とならないよう、老後資金はなおさらしっかりと蓄えておきたい。
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