先進国に遅れをとる日本の金融リテラシー
日本の金融リテラシーは欧米に比べ遅れており、ようやく進みはじめたといった段階かと思われます。欧米を中心とした先進国の金融教育は先に進んでおり、日本も追いつかねば、ますます豊かさから遠ざかってしまうでしょう。
欧米の金融教育に関して、学校で金融を学びはじめるのは小学校の低学年です。カリキュラムには投資教育もあり、高校などでは本格的に学習します。イギリスでは3歳から学び、国主導で行っており、金融が義務教育に組み込まれ、10歳前後でクレジットカード・経費・控除といった内容も学ぶようです。
米国でも州単位で違いはありますが、小学校では小切手の学習、高校では投資教育を行っています。また、学校だけでなく、地域や家庭でも学ぶ土壌があり、自然に身につく環境があるといえそうです。
過去20年で、欧米に比べると、日本の個人資産が増えていないワケ
日本の金融資産に占める預貯金の比率は50%程度で、欧米に比べれば多く、株などの投資比率は15%前後です。欧州では預貯金の割合が30%程度で、投資比率は30%程度。米国では預貯金が15%程度で、投資比率は45%程度です。
過去20年で比較した場合、日本は個人資産を約1.4倍、英国は約2.3倍、米国は約3.4倍にしています。日本は個人資産が株などに流入していない状況で、株の上昇率も低い。この差は金融教育も影響しているかもしれません。近年では、日本も高校での金融教育必須化や、投資非課税制度NISAやiDeCoなどの導入もあり、変化はしつつあります。
社会保険や税金に関して、他先進国と比べ負担率が大きいわけではなく、小さいわけでもありません。欧州に比べれば負担率は小さく、米国に比べれば負担率は大きいようです。
米国は自己責任の国で、税や保険料負担は少なめ。日本は法人税の負担率は高いようで、他消費税や所得税に関しては欧州より少ないようです。今後消費税などは増税する可能性がある、といえそうです。
欧米の不動産は、移民受け入れで人口は増えており、日本の空き家問題などはなく、インフレとともに価格は上昇しています。地震や湿気も少なく、家は長持ちし、中古住宅の流通も盛んです。不動産価格の上昇は続いており、日本以上の上昇になっています。ただし、欧州の一部は下落しているところもあり、人口や経済成長に関係しているといえそうです。
比較的高額な日本の「相続税」
相続は、日本の相続税は高いといわれます。実際に、最高税率は55%で、欧米の45%以上という数値と比較すると高めです。ただし、基礎控除では、日本は3,600万円に対して、仏は1,500万円程度、英独は5,000万円から6,000万円程度といった感じです。欧州と比較すると、高いほうではありますが、突出しているわけではありません。
米国などは基礎控除が6億円ほどで、富裕層以外の相続税はないといってよいでしょう。他先進国を見ると、カナダやオーストラリアは相続税を廃止し、中国やシンガポールはありません。これらの国は、富裕層を招きたい意図もあるのでしょう。相続税に関しては、不平等や格差解消の税金ではあり、必ずしもなくしたほうがよいともいえないようです。
田中 和紀
ファイナンシャルプランナー
※本記事は『FPが教える!マネーリテラシーを高める教科書』(ごきげんビジネス出版)一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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