“リーマンショック後の米国”と“バブル崩壊後の日本”…明暗を分けた「決定的な差」【エコノミストが解説】

“リーマンショック後の米国”と“バブル崩壊後の日本”…明暗を分けた「決定的な差」【エコノミストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

低所得・低物価・低金利・低成長が30年以上続いている日本。その根本原因として『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』著者で第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏は、「バブル崩壊後の対応ミス」を指摘します。リーマンショック後に復活を遂げた米国とは、なにが違ったのでしょうか。その決定的な差を、詳しくみていきましょう。

デフレをほったらかした結果、30年以上続く“慢性疾患”に

このように、リーマン・ショックに対して欧米がこぞって量的緩和政策でデフレ回避をしていた一方、このときすでにデフレに陥っていた日本は欧米に追随しませんでした。

 

そこで起きたのが、1ドル70円台の異常な円高です。これにより日本企業の生産拠点が次々に海外に移転し、国内産業が衰退する「産業空洞化」が起こります。これでバブル崩壊以降ボロボロだった地方経済は、壊滅的に疲弊してしまいました。

 

その後ようやく、2013年4月から日本でも量的緩和政策がとられます。日本のマネタリーベースが一気に伸びているところがそれです。

 

デフレに陥る前の急性疾患の状態でこの手当てを行えば、日本経済もデフレに陥らなかった可能性があります。しかし、バブル崩壊から20年以上経過した2013年時点で、日本はすでにデフレスパイラルから抜け出せない慢性疾患の状態でした。

 

このため、リーマン・ショック後の欧米のような効果は出ませんでした。残念ながら対応が遅すぎたのです。

少子化はどのくらい影響しているのか

低成長の原因を少子化に見る向きもあります。しかし、少子化傾向の国がすべて低成長かと言うとそんなことはありません。ドイツも2011年まで人口は減っていましたが、経済は成長していました。

 

となると、やはり人口動態以外の要因、デフレを長期間放置してしまった金融政策や財政政策の失敗の影響のほうが遥かに大きいでしょう。

 

むしろ、デフレを放置したことで、就職氷河期やロスト・ジェネレーションと呼ばれる世代を作ってしまったことが少子化につながっているので、経済政策の失敗が、少子化の遠因になっていると言えるのではないでしょうか。

 

インフレ率と関係の深い失業率と自殺者数にも関連があることは、コロナ・ショック以降よく取り上げられています。

 

まさに、長期デフレは人口を減らし、国力を削いでいくのです。

 

 

永濱 利廣

第一生命経済研究所

首席エコノミスト

 

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※本連載は、永濱利廣氏による著書『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』(講談社現代新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか

日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか

永濱 利廣

講談社

どうして日本の国力は30年以上も低下し続けているのか? 低所得・低物価・低金利・低成長の「4低」=「日本病」に喘ぐニッポンを、気鋭のエコノミストが分析!

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