「このままではいけない」とFPに相談した結果…
熟年離婚をきっかけに、今後1人で家計管理をしながら年金で暮らしていく厳しさに直面したAさんは、幸か不幸か、離婚を経て、生活することの大変さと同時に元妻のありがたみを痛感します。
もっと感謝して、自由にさせてあげればよかったのか、とも考えたそうですが、すでに夫婦関係を解消しています。Aさんはこれではいけないと思い立ち、離婚調停時にお世話になった弁護士に相談したところ、FPを紹介され、ご相談にいらっしゃったそうです。
話を伺っているうちにAさんは感情が高ぶってきたのか、だんだんと声を荒げます。
「正直妻のことは養ってやってるといつも思っていました。家も妻に渡して“やる”、という気持ちでした。最後の見栄だったんですが。いまは、ひとりの孤独感と懐の寂しさからか後悔の念に苛まれています」
悔やんでも時すでに遅しですので、Aさんに現在の状況を伺い、今後前向きになるよう対策を考えていきます。Aさんの主な家計収支は以下のとおりでした。
食費・日用品費 月8万円
スマホ 月0.7万円
交通費 月2万円
その他 月2万円
その他にも固定資産税や自動車税・車検代、NHK受信料、自動車保険料などの支払いもあり、トータルでの家計収支はマイナスでした。
Aさんの場合、交通費の多さが特に目立っていました。実はAさんは定年退職後、取引先から再就職の誘いがあったものの、妻のことも知った間柄で離婚したことを報告するのもバツが悪く、断ってしまっていました。
もともと仕事一本で生きてきたAさんはこれといった趣味もなく、時間を持て余します。車の運転は好きだったので、やることがないとドライブに出かけるようになり、ガソリン代や高速道路料金、外食費などが定期的にかかっていた結果、交通費とともに食費等の費用が底上げされていたことがわかりました。
Aさんのお考えやいまの暮らしの状況などをヒアリングしたのち、ドライブでの習慣や食費や通信費、水道光熱費、自動車保険などを見直し、月平均1.5万円程度の支出を見直すと同時に、あらためて再就職についてもご提案しました。
激安スーパーを駆け巡り、笑顔のAさん
シニア向けの再就職イベントをご一緒に探したりしながら、再就職によってもし月5万円程度の勤労収入を5年間得ることができたら、介護資金やお孫さんへの援助もある程度用意できそうですよ、とお話ししたところ、ほっとされたようで、やってみようか、とほころんだ表情が印象的でした。
その後Aさんは温泉施設で働きはじめました。サウナがお好きだったAさんはサウナ・温泉にタダで入れるというお得感と同時に、働くことで精神的な満足度が高まったようです。次第に酒量やドライブの頻度が減っていき、先行きの家計に安心感を持てるようになりました。
Aさんは久しぶりに帰省した息子に、「親父最近変わったな」といわれたそうです。このところ通うようになった激安スーパーもAさんにとっては新しい世界です。食品会社からスタートしたAさんにとっては、スーパーは時折なつかしさを感じる場所でもあります。元妻への後悔はまだ残るものの、Aさんはこんな生活も悪くない、と笑顔で今日も激安スーパーに足を運んでいます。
内田 英子
FPオフィスツクル
代表
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