「賃金は上がり続ける」はずだったのに…日本で“経済の常識”が崩壊した「27年前の悲劇」【エコノミストが解説】

「賃金は上がり続ける」はずだったのに…日本で“経済の常識”が崩壊した「27年前の悲劇」【エコノミストが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

世界的にみると「賃金は上がり続ける」というのが経済の常識です。しかし日本では、その常識が「27年前に崩れ去った」と『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』著者で第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏はいいます。27年前(1997年)の日本に一体なにがあったのか。経済の常識が崩壊した理由をみていきましょう。

「悪いインフレ」により物価が上がってしまうケースも

最後に、特殊要因で物価が上昇した点についても解説しておきます。

 

というのも、2008年に物価上昇の山があります。これは「デカップリング(切り離し)論」の影響によるものです。

 

2008年9月のリーマン・ショック以前から、サブプライム・ローン問題の顕在化により、欧米の株価は下がりつつありました。そして、先進国株を売って余っていたお金が、先進国経済はダメでも新興国経済は大丈夫という「デカップリング論」により、原油や穀物の先物市場にどっと流れたことで、金融市場よりも規模が小さい商品先物市場で価格が暴騰しました。

 

2008年の物価上昇はこのためです。これは輸入物価上昇によるものですから「悪いインフレ」です。そして直後にリーマン・ショックが起き、一気にデフレに突入しました。

 

2014年にも物価が上がっています。この年は4月に消費税率が8%に引き上げられた年です(このグラフは消費税調整済み)。これは、バブル以降なかなか値上げに踏み切れずにいたところ、消費税率引き上げによって価格が変わるタイミングで、値上げしたためではないかと思われます。

 

そして、2022年の物価上昇も、ロシアによるウクライナ侵攻による「悪いインフレ」と言えるでしょう。

 

 

永濱 利廣

第一生命経済研究所

首席エコノミスト

 

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※本連載は、永濱利廣氏による著書『日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか』(講談社現代新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか

日本病 なぜ給料と物価は安いままなのか

永濱 利廣

講談社

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