早い時期からの準備が肝心…定年後の支出入を把握
◆月々の支出のマイナス額を家計管理で補う
総務省統計局が発表した「2022年度家計調査報告」をみると、65歳以上の無職の夫婦のみで構成される家計の収支は、毎月約2万2000円不足する額となっている。この不足分を補うためには、老後も働いて給与を得ることや若い頃から積立投資をして老後の資産形成の準備をしておくといった行動が必要だ。
老後は多くの人にとって公的年金が主な収入源となるが、それ以外にも、人によっては退職金や企業年金などの収入を得ることができる。
老後の収入の中では、得られる金額が高額な退職金だが、近年では制度そのものがない企業が増加傾向だ。また、退職金制度があっても、企業の経営状態が悪ければ、もらえる額が大幅に減少してしまう場合もある。そのため、退職金以外の資産形成方法も検討しておきたい。
家計管理をして支出を抑えるといった工夫も当然重要だ。老後の支出は、月々の生活に必要な生活費と子どもの結婚などのライフイベントにかかる費用や家電の買い換え代金などの一時的な出費が額の大きい内容となる。
老後は、ほとんどの人が現役時代よりも少ない収入額で家計をやりくりしなければならないので、いかに支出を減らすかが鍵となる。適度に節約をしながら、メリハリのあるお金の使い方を意識して、老後を楽しく過ごせるようにしよう。
◆定年後の夫婦の家計の収支は平均で「毎月約2万2000円のマイナス」
65歳以上の仕事をしていない夫婦だけで構成される家計の月々の平均額をみると、年金などによる収入が約24万6000円、支出が約26万8000円となっており、毎月約2万2000円のマイナスが見込まれる。
月々の不足分を補うためには、節約して支出の削減に努めることや働いて収入を得るといった方法が考えられる。それ以外にも、現役時代から老後の生活を見据えて資産形成をしていくといった準備が重要となるだろう。
【ポイント1】年代別に整理…将来の収支の目安をつける
65歳以上の夫婦のみの無職世帯の家計収支平均は、下記図表3の通りとなっている。
◆老後の生活費は統計上、現役時代の7割程度
将来に向けて、老後の主な収入と支出を把握しておこう。退職金は人によっては数千万円もの金額を受け取れるため、老後の生活の大きな支えとなる。しかし、職場に退職金制度がない人も多く、退職金を受け取れる人とそうでない人では老後に向けた資産形成の準備に大きな違いが出るだろう。
支出では、現役時代同様に月々の生活にかかる生活費と突発的に発生する一時的な支出の2つが主な出費となる。ただし、老後はほどんどの人が現役時代と比較して収入額が減ってしまうので、適度に節約をしつつ、メリハリのあるお金の使い方を心掛けていきたい。
【ポイント2】定年後の収支をイメージしよう…老後の主な収入と支出を確認収入
収入
●公的年金
公的年金は老定年後の大きなよりどころとなる収入だ。一定の年齢に達したら自動的に受け取り開始できると思っている人も少なくないが、実際には受け取り開始の手続きが必要となるので注意が必要
●退職金・企業年金
退職金や企業年金は、会社員や公務員が利用できる老後の生活の大きな支えとなる制度。勤務先に退職金や企業年金の制度がない人は、その分を補うための資金づくりの方法を検討しておきたい
●労働による収入やその他資産
定年退職後も働き続けていけば収入を得ることができる。それ以外にも、株式を保有していれば配当金、不動産を所有していれば賃貸収入といった形で、資産運用による収入を得る方法がある
支出
●生活費
食費や住居費、水道光熱費、通信費など、生活をしていくうえで支払いが必要となる出費が該当。老後は意識的に節約をすることで、毎月の生活費の支出額を現役時代の7割程度に抑えるのが理想
●一時的な出費
子どもの結婚などのイベントごとや旅行やレジャーにかかる交際費や娯楽費などの費用が該当する。行事系のほかにも、家電や車の買い換えのための資金も、一時的な出費として分類される
●医療費・介護費
高齢になると医療や介護サービスを受ける機会が増える人が多く、支出も増えがち。医療費・介護費に利用可能な制度も活用したいところ
◆支出を評価して節約の意識を高める
家計管理を進める際は、収入を「必要な支出」「ムダな支出」「どちらともいえない支出」の3つに分類して考えると節約意識のアップにつながる。ムダな支出に分類されるような支出を極力無くしていけば、家計の収支を安定させることができる。
〈ここもCHECK!〉
定年退職した翌年の「住民税の金額」は要注意
住民税は前年の収入で金額が決まる!
住民税は前年の収入を元に計算される。定年退職した翌年は、収入が大幅に減少しながらも前年の在職時の収入額に準じた住民税額を徴収されるので、家計にとって大きな負担となってしまう。
要点まとめ
□ 老後の家計は1カ月あたり平均で約2万2000円のマイナスとなる
□ 収入と支出はそれぞれ「定期的」なものと「一時的」なものに分類できる
□ 住民税は前年の収入額から計算されるので、退職した翌年は負担が大きい
頼藤 太希
株式会社Money&You
代表取締役