私たちには、物を捨てる自由が確保されています。しかしその一方で、なかには捨ててはいけないもの、捨てられたり、放置すると人に迷惑をかけるものもあります。本記事では、中央大学法学部教授である遠藤研一郎氏の著書『はじめまして、法学 第2版 身近なのに知らなすぎる「これって法的にどうなの?」』(株式会社ウェッジ)より、「所有権」の法的知識について解説します。

「物を捨てる」ということ

「所有権を手放す」という場面について考えてみたいと思います。まず、一般的感覚として、私たちは、いらなくなった所有物を自由に捨てることができますよね。

 

実際に、毎日のように、自宅近くに定められたごみ収集所に、家庭のごみを捨てているでしょうし、職場でも頻繁に、大量のごみが発生しているかもしれません。所有権の中に「処分」の自由も含まれていますから、物を捨てる自由も確保されているのです。

 

しかし、少し問題となる場面もあります。最近、遺骨をサービスエリアのごみ箱に捨てたり、コインロッカーに放置してしまったりする人が増えていることです。遺骨を自宅に保管することは法的に問題となりませんが、墓を入手することができないまま時間が経過したり、「墓じまい」をした後に大量の先祖の遺骨を抱え込むなどした人が、保管に困って、遺骨を置き去りにしてしまうようです。

 

これに関し、刑法には、死体損壊等の罪に関する条文があります。

 

刑法190条

死体、遺骨、遺髪又は棺に納めてある物を損壊し、遺棄し、又は領得した者は、3年以下の懲役に処する。

 

この条文は、国民の宗教的感情や死体に対する敬虔・尊崇の感情を保護するために定められたものと考えられています。私たちには、遺骨をごみのように捨ててしまう自由は与えられていないのです。散骨などが(節度をもったうえで行われる限り)処罰の対象となっていないのとは、次元が異なる問題です。

 

しかしそれでも、遺骨の置き去りは後を絶たないようです。引き取り手のない遺骨は、警察を通じて自治体に送られ、無縁納骨堂に保管される場合もありますが、その納骨堂も、現在、いっぱいになってしまっているのだとか……。

 

その場合は、処理業者に委託して、処分に踏み切っているところもあるようです。そこで、遺骨を処理するサービスを積極的に展開する業者もいるようです。

 

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