意外に多い大手企業の「メンタルヘルス不調者」
大企業に就職して順風満帆に見える人のなかにも、ストレスやプレッシャーに押し潰され、精神的にも身体的にも衰弱してしまう人を見受けることがあります。一般的なイメージとして、大企業では福利厚生も充実している企業が多く、生き生きと働いている人が多いように見えるかもしれません。
しかし、令和4年の労働安全調査によると従業員1,000人以上の企業で過去1年間にメンタルヘルス不調により1ヵ月以上休業した労働者または退職した労働者がいた事業所割合および労働者数をみると、該当する労働者がいた企業は93.5%もあり、該当の労働者も1.2%と比較的多いことがわかります。
山本さんも、今回は転職という道を選ばれましたが、転職前にお金周りの準備を行うことも可能です。転職前には毎月10万円以上の貯蓄もできていたのですが、投資を敬遠されていた山本さんは保険商品や貯金を行っていました。今回の転職で、学資保険を除いた貯蓄性の保険は解約され、生活費の補填に充てています。
「資産に働いてもらう」ことも選択肢のひとつ
最近ではNISAやiDeCoという税制優遇制度の普及もあり、投資について敬遠される人が減っていますが、いまだに投資へ抵抗を感じる人が一定の層いることも事実です。また、現在投資を行っている人のなかにも、自身の考えのもとではなく、周りに流されて投資を行っている人も少なくありません。投資は、自身の目的のために正しい知識を持って行うことで、いたずらに忌避するものではなく、うまく利用できるものに感じられるのではないでしょうか。
今回の山本さんも、これまでの貯蓄を積極的な運用に回しておくことで、転職までに資産を増やしておくことができたのかもしれません。また転職後の収入源に対して、運用益を取り崩すことや分配金などを受け取るインカムゲインで補填することができたでしょう。
相談をされたときの資産状況を見ても、保険は解約されていましたが、貯蓄はまだある程度余力がありました。今回は毎月の収入目的のインカムゲインを考えた毎月分配型投資信託へ一部の資産を移し、毎月3万円を受け取る方法を提案しました。妻の収入と合わせても支出を少し下回りますが、転職後すぐだったので、今後収入が増えることも考え、無理のない運用を行うことになりました。
資産運用は、目的やそのときの状況によって、運用方法を考えていくことが大切です。日本人は「みんながやっていると聞くと行動する」といわれるほど、周りの人と同じ行動をするといわれています。周りがやっているからではなく、本質を考えて自分に合った行動も大切ですね。
吉野 裕一
FP事務所MoneySmith
代表