「やっぱり私が母親よ!」代理母が子の引き渡しを拒否…“代理出産”における本当の親は誰なのか?法が下す判断とは【中央大学法学部教授が解説】

「やっぱり私が母親よ!」代理母が子の引き渡しを拒否…“代理出産”における本当の親は誰なのか?法が下す判断とは【中央大学法学部教授が解説】

科学技術の発展により、「代理出産」が認められる国もあります。さまざまな理由で子供を持てなかったカップルにとっては新たな選択肢が広がる一方で、倫理的・法的な観点から賛否が分かれる問題として盛んに議論が繰り広げられています。本記事では、中央大学法学部教授の遠藤研一郎氏の著書『はじめまして、法学 第2版 身近なのに知らなすぎる「これって法的にどうなの?」』(株式会社ウェッジ)より、代理出産について解説します。

代わりに母となって産むということ

少し倫理的な親子問題についても取り上げておきましょう。母と子のつながりは、妊娠・出産という事実によって分かるものなのでしょうか?

 

現在、日本の夫婦の10組に1組は不妊症といわれています。そんな時、夫婦は、不妊治療を選択するかもしれません。深田恭子と松山ケンイチが主演したドラマ「隣の家族は青く見える※3」では、厳しい不妊治療の現実に、夫婦で誠実に向き合っていました。

 

ただし、不妊治療の成果が上がらなかったり、または、治療の効果が期待できなかったりする場合はどうでしょう。その場合、生殖技術が高度に発達した現在において、夫婦の選択肢の1つとして、代理出産があります。

 

※3:2018年放送のフジテレビ系ドラマ。妊活に臨む夫婦が、複数のカップルとコーポラティブハウスで生活するストーリー。子を産まない選択、同性愛、夫の再就職などそれぞれの夫婦が抱える悩みがサブテーマに。

 

代理出産とは、妻の代わりに別の女性(代理母)に子どもを妊娠してもらって、生まれた子どもを依頼者が引き取るというものです。その体外受精技術が実用化された後は、卵子と子宮が必ずしもパッケージとならず、依頼者夫婦の受精卵をほかの女性の子宮に移植し、分娩させるという方法(いわゆる子宮貸し)も、技術上は可能となっています。

 

[図表]代理出産のイメージ

 

日本国内では禁止されていますが、海外には認める国もあります。日本人の中でも、それを利用して外国で代理出産を依頼する例が少なくありません(図表参照)。果たして、代理出産は、認められるべきものなのでしょうか?

 

たとえば、日本において、何の法的規制もない(代理出産が認められている)状態だと仮定して、読者のみなさんは、次のような事例をどのように受け止めますか?

 

事例

A子(32歳)は、高収入な夫と5年前に結婚し、専業主婦として不自由なく暮らしていましたが、この夫婦は、A子に医学上のリスクがあるため、子どもをもつことができずにいました。それを不憫に思ったA子の妹B子(29歳、独身)は、ある時、自分の卵子を使って代理出産をしてはどうかとA子夫婦に提案しました。

 

A子夫婦は、B子の申し出をうれしく受け止めましたが、B子が妊娠・出産をする形での代理出産は、キャリアウーマンであるB子の会社での立場に影響が出るのではないかと心配しました。そこで、都内にある不妊症センター(いわゆる代理出産の仲介業者)に行って、報酬300万円で代理出産をしてくれる女性を、できるだけ早く探してもらいたいと依頼しました。

 

その頃、C美(23歳、独身)は、ギャンブルに負けて消費者金融から借りた180万円の返済に苦しんでいました。給料も安く、親を含む親戚とも絶縁状態にあり、借金を返済できるあてはありませんでした。そんな折、ふと、不妊症センターの「代理母(子宮貸し)募集」の広告に目がとまりました。C美は、「千載一遇のチャンス!」と思い、それに応募しました。

 

A子夫婦とB子とC美は、センターの仲介で、A子の夫とB子の受精卵をもとにした代理出産契約を締結しました。無事に妊娠・出産を経て、元気な赤ちゃんが生まれたら、その子を引き渡すこと、そして、C美は、その子に対する権利のすべてを放棄すること、その対価としてC美に300万円を支払うことが契約内容でした。

 

契約締結から約1年後、C美は無事に出産を終え、A子夫婦は子どもを受け取り、B子は姉の幸せそうな姿を喜びました。C美は借金を全額返済して、窮地を免れました。不妊症センターも、30万円の仲介手数料を手に入れました。めでたし、めでたし(?)。

 

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はじめまして、法学

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遠藤 研一郎

株式会社ウェッジ

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