「年金プラス40万円」で老後安泰のはずが…「退職金3,000万円」をつぎ込んで〈高配当株投資〉を始めた65歳男性の末路【FPが解説】

「年金プラス40万円」で老後安泰のはずが…「退職金3,000万円」をつぎ込んで〈高配当株投資〉を始めた65歳男性の末路【FPが解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

「年金の足しになれば」と、退職金を元手に投資を始める人は少なくありません。投資のなかでも、高配当株式への投資は、配当金の積み上げにより長期で利益をあげることも見込めるでしょう。しかし同時に、大きなリスクが潜んでいることも忘れてはいけません。本記事では、Eさん(仮名・65歳男性)の事例とともに、退職金運用のポイントについてFPの牧元拓也氏が解説します。

退職金を投資運用する際のポイント

Eさんのように退職金を運用する場合に考えておくべきポイントを3つまとめました。

 

1.配当金が減配する可能性も考える

配当金は定期預金などの金利と異なり、決まった額が受け取れるとは限りません。企業の業績が悪化すると減配することや配当自体がなくなることも考えられます。目先の配当利回りだけを見るのではなく、企業業績は伸びているか、ビジネスモデルに納得感があるか、などは意識してみたほうがよいでしょう。

 

配当金が一定で株価が下落すると配当利回りは上がります。そのため、「株価が下落しているため配当利回りが高い=将来の減益することによって減配する可能性もある」ということも判断材料に入れることをおすすめします。

 

2.リターンだけでなくリスクにも目を向ける

投資においてリスクの理解が必須といっても過言ではありません。多くの方はリスクという言葉を聞いて「損をする」「危険」「値下がりする」などをイメージされますが、運用におけるリスクは「価格の振れ幅」のことを指します。

 

リスクが大きい(高い)ということは価格の上下が大きく、リスクが小さい(低い)ということは価格の上下が小さいということになります。

 

また、リスクの大小によって期待できるリターンが変わってきます。株式はハイリスク・ハイリターンに位置づけられ、値動きもなくまったくといってよいほど金利が付かない預貯金はローリスク・ローリターンに位置づけられます。

 

また株式のなかでもIT企業のような成長性が高い業種より、銀行のような成長性は期待できないものの安定した経営がなされている業種のほうが株価も安定していると思われますが、決して値下がりしないというものはありません。

 

世界全体の株式に分散投資をしたとしてもコロナショックのような「〇〇ショック」といわれる相場状況では30~40%程度の一時的な下落はありますので、個別株式の場合はより値下がりする可能性も考えておいたほうがいいといえます。配当目的の運用でも一時的な株価の下落に耐えられるかよく考えてから投資したほうがいいでしょう。

 

金融の先進国であるアメリカでは「Good sleep」と表現され、「安心して眠れるか」を判断基準にする方法があります。あくまで想像するしかないですが、仮にEさんが退職金の3,000万円を投資し、2,000万円を下回ったこと(1,000万円以上の下落)をイメージしたとき、損失が気になって眠れないようなら投資金額を減らすか、債券なども入れたバランス運用を取り入れたほうがいいと考えられます。

 

3.ゴールまでの距離とリスクのバランスを考える

目的地(ゴール)にたどり着くためにはさまざまな方法があります。実生活であれば、徒歩5時間かかる距離で公共交通機関もない場所に行きたい場合、車で行くと思います。時速60キロの速度で走るよりも時速100キロのほうが目的地(ゴール)に早く到着しますが、警察にスピード違反で捕まることや、事故を起こしてしまうリスクがあります。

 

投資をするにも目的(ゴール)がありますが、リスクとのバランスが大切です。たとえば、家を買うために手元資金3,000万円を2年後に4,000万円にしたい場合、年利15%必要になります。これは車を法定速度以上で走らせるような非現実的で博打的なものです。まさに個別株式により短期間で一攫千金を狙うような運用で、暴落した場合は目も当てられません。

 

仮に10年で4,000万円を目指す場合、年利3%で達成可能です。もちろん運用途中に値下がりする局面は想定されますが、世界株式が過去半世紀で6%程度のリターンがあることや、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が2001年~2023年度第一四半期までの約20年間で3.97%のリターンだったことを考えると現実的であるといえます。

まとめ

Eさんのように退職金で運用を始める方も少なくありません。

 

目先のメリットばかりに目を向けるのではなく、自分自身に合う運用方法やリスクをしっかりと考慮したうえでスタートすることをおすすめします。

 

 

牧元 拓也

ファイナンシャルプランナー

株式会社日本金融教育センター

 

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