燃料油価格激変緩和補助金の「長期化」で想定される問題
燃料油価格激変緩和補助金は、期間限定の暫定的な措置として施行されたものです。また、補助金の制度自体が、一時的なものです。したがって、今後、長期にわたって継続するとすれば、以下の問題が生じることになります。
・財源の問題
・ガソリン税との関係
◆財源の問題
まず、財源の問題です。西村経済産業大臣は、25日の閣議後の会見で、「このペースでいくと、年間数兆円の財政支出になるので、いつまでも続けるわけにもいかない」と述べ、長期化に懸念を示しています。
2022年度は、燃料油価格激変緩和事業のために5月の補正予算で11,655億円、12月の第二次補正予算で3兆272億円が計上されました。そして、補正予算の財源の多くは国債発行によって賄われました。
もしも、燃料油価格激変緩和が現在の規模で継続するならば、慢性的な赤字状態が続く国の財政にとっては大きな負担となります。
◆ガソリン税の「トリガー条項」との関係
次に、ガソリン税の「トリガー条項」との関係をどうするかという問題があります。
ガソリン税には、本来、ガソリン価格が高騰した場合にガソリン税の負担を抑える「トリガー条項」というしくみがあります。これは、連続する3ヵ月の平均のガソリン価格が1リットル160円を超えたら、ガソリン税が1リットルあたり25.1円抑えられるというものです。
現在のガソリン税の金額は1リットル53.8円ですが、これは1974年から適用されている「特例税率」であり、本来は1リットル28.7円です(本則税率)。トリガー条項が発動することで、特例税率の適用をストップし、その差額分の1リットル25.1円が課税されなくなるということです。
現在の状況は本来であればトリガー条項が発動する場面です。しかし、実際には発動されていません。なぜなら、トリガー条項は現状「凍結」されているからです。
トリガー条項は、東日本大震災が発生した直後の2011年4月から、復興のための財源を確保しなければならないということで、特別法によって凍結されています。したがって、2010年度税制改正によって導入されて以来、一度も発動したことがないのです。
昨今、補助金という形で対応するのではなく、トリガー条項を発動させるべきではないかという議論がみられますが、このような事情によります。
政府は当初、トリガー条項の凍結解除も検討していました。しかし、ガソリン税が国・地方自治体にとって重要な財源になっている現状を重視して、見送ったという経緯があります。
もし、燃料油価格激変緩和補助金の制度を続けるのであれば、トリガー条項との関係をどうするかが問題になると想定されます。既に、トリガー条項が発動された場合に抑制される額(1リットル25.1円)よりも、補助金の額(1リットル35.7円(10月26日~11月11日))のほうが大きくなっています。
ガソリン価格の高騰は長期化しており、国民にとって重い負担となっています。したがって、価格を抑制するための政策はきわめて重要です。
しかし、補助金を継続するのであれば、財源には限りがあるため、どの程度の金額でいつまで継続できるのかという問題があります。また、補助金の支給が長期化すれば、ガソリン税のトリガー条項との関係をどうするのかという問題も出てきます。
さらに、ガソリン価格の高騰は、原油価格自体が世界的に上昇していることだけでなく、円安や、経済の停滞により国民の給与が上がらないこと、エネルギーの多くを海外からの輸入に頼る産業構造等、さまざまな事情が影響しています。国民の負担を軽減するには、それらの問題にも有効に対処する必要があります。国会・政府には、きわめて難しい舵取りが求められています。
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