(※画像はイメージです/PIXTA)

東京都知事の諮問機関である東京都税制調査会(都税調)は10月19日、都内のホテル等に宿泊する際の「宿泊税」の税負担水準を引き上げる方向性を示す報告書案をまとめました。宿泊料金の上昇や、「民泊」の増加等の実態を踏まえたものです。しかし、そこからは、宿泊税という制度が抱える問題点が浮かび上がります。税理士の黒瀧泰介氏(税理士法人グランサーズ共同代表)に聞きました。

他の自治体にも波及?都税調の提言案の内容

以上を前提に、都税調の提言案がどのようなものか、見てみましょう。まず、東京都の現行の宿泊税は、ホテルまたは旅館を対象としており、民宿やペンション、最近話題の「民泊」等は含みません。そして、金額は以下の通りです。

 

【東京都の宿泊税の額】

・宿泊料金1人1泊1万円~1万5,000円未満:100円

・宿泊料金1人1泊1万5,000円~:200円

 

宿泊料金1人1泊1万円未満については非課税(課税免除)となっていますが、趣旨は、経済的に余裕のない人や、修学旅行客や、ビジネス目的で訪れる宿泊客を除外することにあります。

 

都税調は、この現行の体系を見直そうとしているのです。大まかな内容は以下の通りです。

 

・税負担水準を引き上げる

・宿泊料金に応じた新たな税率区分を設定することを検討する

・定額ではなく「定率」で徴収することを検討する

・課税対象者等を整理する

・宿泊料金による課税免除を見直す

・民泊も課税対象とする

 

宿泊税が導入された2002年当時と比べ、ホテル等の宿泊費が高額化しています。また、超高級ホテルも増えています。さらに、民泊という新しいタイプの宿泊施設も登場しています。それらのことを考慮すれば、現状に即した税負担のあり方を再検討すべきではないかということです。

 

この議論には説得力があり、宿泊税を施行している他の自治体や、宿泊税の導入を検討している自治体にも影響を与える可能性が高いといえます。

浮かび上がる「宿泊税に関する問題点」

しかし他方で、今回の都税調の提言からは、東京都にとどまらず、宿泊税という税金のありかたをめぐる問題点が浮かび上がります。

 

それは、宿泊税を負担してもらう宿泊客の範囲をどこまで線引きするか、また、いくら負担してもらうか、という判断の難しさです。

 

前述したように、宿泊税の根底には「応益負担」という考え方があります。ホテル・旅館の宿泊客は、訪れた自治体の行政サービスの便益を享受することになるので、一定の負担をしてもらおうというものです。

 

都税調の示した方向性は、宿泊税を負担する人の範囲や税負担の程度についてより実態に合致させようとするものであり、その点だけみると、応益負担の考え方となじみやすいといえます。

 

しかし、他方で、宿泊税には以下の2つの根本的な課題があります。

 

・「目的税」という性質が希薄になる可能性がある

・宿泊客に過度の税負担を負わせる可能性がある

 

それぞれについて解説します。

 

◆「目的税」という性質が希薄になる可能性がある

第一に、宿泊税は前述したように、「法定外目的税」であり、税収の使途が特定の目的のためでなければなりません。

 

東京都の宿泊税の目的は「国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光の振興を図る施策に要する費用に充てる」というものですが、課税対象となる宿泊客の範囲を広く設定すれば、この目的が希薄になる可能性があります。

 

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