(画像はイメージです/PIXTA)

「成功」を収めるには、たゆまぬ努力と本人の才能だけでなく、目標までまい進する「やり抜く力」が必要――。日本の名アスリートの例とともに、「やり抜く力」の科学的定量化に成功したエピソードを交え、「やり抜く力」の重要性を脳科学者の茂木健一郎氏が解説します。※本連載は、茂木 健一郎氏の書籍『運動脳の鍛え方』(リベラル新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

「やり抜く力」で成功を収めた、二人のアスリートの例

私たちが成功を収めるために何が必要なのか。

 

努力? それとも才能?

 

これは、ビジネスやスポーツの世界で長年にわたり議論されているテーマです。

 

この議論に、一つの風穴をあけた人物がいます。アメリカの心理学者であるアンジェラ・リー・ダックワース氏が、世界中の叡智が集結するカンファレンス「TED」で新たな研究成果を発表(2013年)したことは記憶に新しいのではないでしょうか。

 

※TED(Technology Entertainment Design)……世界中の著名人や知識人によるさまざまな講演会を開催・配信している米国に本部を置く非営利団体。過去には、Microsoftの創業者であるビル・ゲイツ氏や、Appleを設立したスティーブ・ジョブズ氏も登壇して話題になった。

 

それは、「グリット」という考え方です。

 

グリットとは、何かの目的を達成するために継続的に粘り強く努力することによって、物事を最後までやり抜く力のこと。冒頭の問いに対して、ダックワース氏は自身の研究結果をもとに、誰もが生まれながらの素晴らしい才能を持っているわけではないし、豊かな才能や知能を持ったすべての人が成功を収めているわけでもないと考えました。

 

成功を収めるために最も重要なのは、目標の実現に向けた継続的な努力、つまりやり抜く力だと提唱したのです。

 

これを裏付けるため、一見すれば才能の持ち主のように見えて、実はこのやり抜く力で成功を収めた二人のアスリートの事例を紹介したいと思います。

 

まず一人目は、元マラソン選手の有森裕子さん。

 

有森さんといえば、バルセロナ、アトランタオリンピックと、二大会連続でメダルを獲得したマラソン界の成功者です。

 

そんな有森さんに私がお話を伺って驚いたのは、高校に入学して陸上部に入部を希望したものの、陸上部の監督はランナーとしては素人同然だった有森さんの入部すら認めてくれなかったというのです。

 

ただ、それでも諦められなかった有森さんは、監督に入部が許されるまで粘り強くアピールし、一カ月後にようやく入部が許可されたといいます。

 

ただ、高校では特段目立った記録を出すことができず、大学に進んでからも変わらず、大学を卒業してからの進路も、実業団であるリクルートになかば押し掛けで自分から連絡を取り続けたそうです。その熱意を小出義雄監督に認められ、最初は「マネージャー兼選手」という形でやっと陸上部に入部でき、そこから小出監督の指導によって開花したというわけです。そして

 

二人目が、元プロテニス選手の松岡修造さん。

 

現役時代は世界のテニス界で目覚ましい活躍を披露し、当時の日本人最高ランクである46位まで到達し、四大大会でも輝かしい成績を残しました。

 

テレビでは熱血キャラでいつも前向きなイメージの松岡さんですが、そんな松岡さんもまた、テニスを始めたジュニアの頃は自分の恵まれない体格と身体能力に相当悩んだといいます。

 

でも、才能のなさを指摘されながらも、松岡さんは諦めることなくテニスクラブで指導を受け、貪欲にテニスを学びました。

 

さらに、松岡さんは“幼稚園から慶應一筋”という環境で育ってきた甘さが自分の成長を阻害していると考え、自分自身を鍛え直すため、自ら志願して九州のテニス強豪校に転校したそうです。そこで自分に甘えることなく、粘り強く努力をし続けた結果、徐々に頭角を現していったというのです。

 

このように、有森さんや松岡さんなどの名選手でさえも、生まれ持った才能を頼りにして成功を勝ち取ったわけではないのです。

 

自分の設定したゴールに向かい、何があっても諦めず徹底的に戦い続ける。この資質こそがやり抜く力ということなのですが、なぜこの二人のアスリートの事例を紹介したのかといえば、このやり抜く力というのは前頭葉の発達と相関関係があることが脳科学の研究でわかっているからです。

 

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次ページこれまで測定できなかった「やり抜く力」の科学的定量化が実現

※本連載は、茂木 健一郎氏の書籍『運動脳の鍛え方』(リベラル新書)より一部を抜粋・再編集したものです。

運動脳の鍛え方

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茂木 健一郎

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