これまで測定できなかった「やり抜く力」の科学的定量化が実現
東北大学の細田千尋准教授らによる研究によれば、これまで正確な測定ができなかった「やり抜く力」の科学的定量化に成功しました。
人工知能が人間の脳を分析した結果、人間では認識不可能だったやり抜く力の強さにかかわる前頭葉の構造を発見し、『Nature Research/Communications Biology』(2020年4月)に掲載されたのです。
細田准教授らは、研究用に開発された「持続性測定器」を使って脳をスキャンすることで、対象とする人間にやり抜く力があるかどうかを80~90%の精度で判別できるようになったといいます。
この数値は、従来の標準的な面接評定の信頼性を大きく上回るそうです。
まず、被験者の全員の脳構造をMRIで詳細に記録し、続いて被験者に「ハノイの塔」と呼ばれる複雑なパズルを1時間にわたり解かせた結果、参加者のうち52%は達成し、48%は途中で諦めたといいます。諦めた理由で最も多かったものが「予想より難しい」であり、続いて「疲れた」でした。
次に細田准教授らは、達成者と非達成者の間で脳構造に違いがないかを機械学習を用いて調査した結果、達成者の左脳の前頭前野の灰白質の容積と白質の神経線維の方向性の強さが、非達成者に比べて優位に大きいことがわかったのです(図表3を参照)。
また、図表2に示す部分(★印)において、達成者は非達成者に比べて神経接続が多く観察されました。
得られた結果をもとに再度、参加者の脳構造から達成の可否を推測してみると、精度は90%にも及びました。こうした細田准教授らの研究結果から、何事もすぐに諦めずにやり抜く力と前頭葉の構造との相関関係が理解いただけたのではないでしょうか。
そして、そんな前頭葉は運動によって鍛えられると述べましたが、有森さんや松岡さんにしても、マラソンやテニスといった運動によって前頭葉を鍛え上げたことでやり抜く力を身につけたと考えればつじつまが合いますよね。
さらにいえば、記憶に新しいサッカーのワールドカップ・カタール大会で、日本がスペインに2-1で逆転勝ちして決勝トーナメント進出を決めた試合、決勝点をアシストした三笘(みとま)薫選手のクロスがゴールラインを割っているかどうかがVAR判定になり、わずか1ミリ残っていたことでゴールが認められました。
「三笘の1ミリ」もまた、前頭葉が起こした奇跡だったと私は思うのです。
茂木 健一郎
理学博士/脳科学者
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