「イールドカーブ・コントロール」の導入
さらに日銀は、2016年9月の金融政策決定会合において、「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を導入しました。「長短金利操作」は、「イールドカーブ・コントロール(Yield Curve Control。以下、頭文字を取ってYCCとする)」ともいわれます。
YCCは、短期金利のマイナス金利政策に加え、「10年物国債」の金利がおおむね0%程度(価格変動の許容幅は上下0.1%程度)で推移するように目標値を設定し、短期から長期までの金利全体の動きをコントロールする政策です。そして、現在に至るまで続けられています。
なお、YCCにおける「10年物国債」の価格変動の許容幅は、その後漸次拡大されてきています。2018年7月から上下0.2%程度、2021年3月から上下0.25%程度、さらに2022年12月に上下0.5%へと幅を広げています。長期金利まで強くコントロールする政策は、世界的にも極めて異例です。
大規模金融緩和の長期化によって懸念される「市場の機能不全」
こうした大規模金融緩和の長期化に対して「副作用」が発生するという懸念も指摘されています。
まず、上場投資信託(ETF)等のリスク性資産の購入を長期間続けることは、株式市場の機能を損ねないかという懸念です。すなわち、株式市場は、個別の株式の価格発見機能(投資による個別株の価値評価)を有しますが、この機能が正しく働かず、企業の新陳代謝が滞っていると考えられています。
また、日銀が長期にわたって大量の国債を保有すると、国の財政規律の緩みにとどまらず、国債市場が機能不全を起こすという問題があります。国債市場における民間同士の取引量が減少した状態で市場を動かす出来事が起こると、債券価格(つまり金利)が変動し混乱が生じやすくなります。利回りに政策的(つまり人為的)な操作が継続的に加えられ、「ゆがみ」が顕著となれば、当然ながら「投機」の対象になりやすくなります。
国債の利回りは本来、市場で自律的に決まるべきものです。日銀が関与する現在の状態が長期にわたって続くことは、好ましいことではないのです。
小松 英二
CFP® FP事務所・ゴールデンエイジ総研
代表・経済アナリスト
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