(画像はイメージです/PIXTA)

多くの人は60歳で定年退職するが、年金がもらえるのは原則65歳から。この「空白の5年間」を収入なしで過ごすのは不安だが、かといって年金を繰上受給すれば、以後もずっと年金額が減額されてしまう。そんな悩みを解決する、定年後の賢い働き方を見ていこう。※本連載は、頼藤太希氏監修のMOOK『定年後のお金の不安がなくなる本』(晋遊舎)より一部を抜粋・再編集したものです。

働き続けやすくはなったけど…再雇用は「収入減」に注意!

◆60歳以降は働いても現役時代より収入ダウン

かつては「定年=60歳」というイメージが強かったものの、近年は平均寿命および健康寿命が延びたことで60歳を超えても働き続ける人が増えている。

 

60歳以降も同じ会社で働く継続雇用は珍しくなく、高年齢雇用者安定法により、再雇用などで65歳まで働ける会社は99.9%にものぼる。また、数は少ないものの、再雇用後の定年年齢を70歳までとしている企業も増えている。同じ会社での再雇用にこだわらず、転職や業務委託、開業など選択肢はたくさんある。

 

ただし、昔と比べると60歳以降も働きやすくはなったとはいえ、収入が大幅に減少する点には注意が必要だ。

 

定年後の再雇用は1年単位の有期雇用となり、収入が半分程度に減ってしまうケースが多い。

 

あくまで65歳の年金受給開始までの空白期間の収入を確保するために働くなら問題はないだろうが、住宅ローンや教育費などの支払いが60歳以降も残っている場合はやりくりが大変になるかもしれない。

 

また、収入減少は定年前から発生する可能性がある点にも注意したいところだ。役職についている場合、50代後半に役職定年により収入が減る可能性もある。その場合は定年を待たず、50代のうちから定年後も長く働ける会社へ転職を検討するのもひとつの手だろう。

 

【ポイント1】選択肢は意外と多い! 60歳以上の「4つの働き方」とは?

 ➀再雇用・継続雇用 

 

高年齢者雇用安定法により、本人が希望すればほとんどの会社で65歳まで働き続けられるようになった。新たに仕事探しをする必要がなく、慣れ親しんだ会社で働けるが、現役時よりも給与や雇用条件が下がってしまうケースが多い。

 

メリット

慣れ親しんだ場所で働ける

新しく仕事を探す必要がない

 

×デメリット

給与や雇用条件が変更されることもある

基本的には65歳までしか働けない

 

 ②転職・再就職 

 

定年まで勤めた会社は退職し、新たな勤め先を探す方法。業務内容によっては同じ会社で再雇用されるよりも収入が上がるケースも。ただし、就職活動が難航し、なかなか希望する就職先が見つからない可能性もある。

 

メリット

失業手当や再就職手当等の受給が可能

再雇用より給与が上がる可能性がある

 

×デメリット

仕事を探す手間がかかる

65歳以上でも勤務可能

 

 ③業務委託・フリーランス 

 

勤めていた会社と業務委託契約を結び、個人事業主として仕事を請け負ったり、複数社と契約を結ぶ働き方。働き方次第では収入を上げることも可能。ただし収入が不安定になったり、社会保険等への加入ができなかったりする点に注意。

 

メリット

複数の会社から仕事を受けられる

仕事の量を調整しやすい

 

×デメリット

収入が不安定

社会保険等への加入はできない

 

 ④自営・起業 

 

これまでの経験や趣味を活かし、起業したり飲食店をオープンするなどの働き方もある。若い世代のように売上にこだわらず、「やりたいことで稼ぐ」という夢を叶えることができる。業務内容によっては開業時の初期費用がかかるので慎重に。

 

メリット

やりたいことを仕事にできる

働き方や労働時間を自分で決められる

 

×デメリット

収入が不安定

開業時に初期費用がかかるケースもある

 

【ポイント2】50代後半から注意を…収入は「定年前」からダウンする

●定年前から収入はダウン、年金受給開始は原則65歳から

 

定年のタイミングで収入が下がることはなんとなくわかっていても、それまでは収入が安定していると考えているケースは少なくない。

 

しかし、実際は定年前の50代後半から「役職定年」により収入がダウンしてしまうこともあるのだ。年収が下がることで働くモチベーションが低下するだけでなく、将来もらえる厚生年金も減ってしまうことに。

 

また、高年齢者雇用安定法により、年金受給開始の65歳まで働くことは可能だが、下記の図表5のように収入は約半分に下がってしまうというデータもある。できるだけ長く働き続け、年金受給開始を遅らせて受給額をアップさせるのが賢い選択肢といえるだろう。

 

[図表4]

 

【55歳…役職定年】

多くの会社では定年前に役職定年を設けている。このタイミングで収入が下がってしまうため、教育費やローンの支払いがあるとやりくりが大変に。

 

【60歳…定年】 

定年後、年金受給開始の65歳まで再雇用などで働く人が増えている。年金を繰上げ受給をすると、年金額が生涯にわたり減額されてしまうため注意。

 

【65歳…年金受給開始】 

65歳からは公的年金がもらえるように。受給開始時期を繰り下げるほど、年金受給額はアップする。働き続けて繰下げ受給するのがおすすめ。

 

 

[図表5]定年後は働いても収入半減

 

定年後に同じ会社で働く再雇用では、1年ごとに契約を更新するケースが多いです。60歳時点と比べ収入が減るのが一般的で、平均44%ほどダウン。50%以上下がることも珍しくなく、モチベーション低下することも。

 

 

 〈ここもCHECK!〉
定年後も働いて年金を増やす

 

月収20万円で厚生年金に5年加入すると年金額は6万5000円/年増える

定年後も月収20万円で働いた場合、老齢厚生年金額が1年間あたり約1万3000円増える。5年間同じ条件で働けば、将来もらえる年金額は1年間あたり6万5000円ほど増える計算だ。

 

[図表6]

 

 要点まとめ 

 

□ 定年後の働き方は再雇用をはじめ、再就職や業務委託などさまざま

□ 収入は定年後だけではなく、定年前の役職定年時にもダウンする

□ 定年後も働き続けることで、将来もらえる年金額を増やすことが可能

 

 

監修 頼藤 太希
株式会社Money&You
代表取締役

※本連載は、頼藤太希氏監修の書籍『定年後のお金の不安がなくなる本』(晋友社)より一部を抜粋・再編集したものです。

定年後のお金の不安がなくなる本

定年後のお金の不安がなくなる本

頼藤 太希 監修

晋遊舎

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