ゆとりある老後に必要な「労働収入」を知っておこう
◆定年後「年金のみ」で暮らすのは厳しいが…
「老後2000万円問題」で話題になったのは、老後の収支が毎月5万円ほどの赤字になるという総務省の統計結果によるものだった。
令和4年分の統計においても、65歳以上の無職夫婦世帯の収支は毎月2万3000円の赤字である。老後を年金のみで暮らす場合はゆとりがなく、生活を切り詰めるか、資産を取り崩すか、いずれかの選択をしなければならないだろう。
とはいえ、赤字額は決して大きくないため多くの収入を得る必要はない。元気なうちに、赤字を補填する程度に稼げば十分なのだ。
ゆとりある老後 38万円必要 → 年金22万円+労働16万円
平均的な老後 26万円必要 → 年金22万円+労働4万円
平均的な老後生活には約26万円、ゆとりある老後には約38万円が必要とされている。年金収入が平均の22万円と仮定すると、平均的な老後を過ごすために必要な労働収入は毎月たった4万円である。たくさん稼ぐような働き方は不要。
◆老後2000万円問題、難しく考えなくて大丈夫!
令和元年、金融庁の市場ワーキング・グループ報告書で、老後資金が2000万円不足すると話題になった。
それ以降「老後2000万円問題」という言葉がひとり歩きし、将来に不安を抱いている人も少なくない。ただし、この報告書をしっかり読んでみると年金収入だけで生活する場合は毎月5万円の赤字が発生し、定年後30年生きるならという前提の試算結果に過ぎない。
例えば70歳まで働き、年金受給開始を5年繰り下げれば年金額は42%増加する。年金額が平均の22万円の世帯の場合、増額は約9万円となり、赤字の心配はなくなるのだ。
年金を繰り下げない場合でも、年金に加えて労働収入が5万円ほどあれば平均的な老後生活を送ることは難しくない。定年が60歳だった時代よりは長く働くことが普通にはなっているものの、たくさん働く必要はない。ゆるく働き続けることが大切だ。