投資では「相性のいい銘柄の組み合わせ」でリスクを低減できる
次に投資編である。株式投資では、企業間の株価推移の関係を把握することで、リスクの低減に活用できる。種々の理論はあるが、大事なことは、自分で理解してその方法を自分で試せるようになることである。
ここでは具体的な企業の例を挙げて、リスクを低減する方法について見ていく。投資の天才・綾小路英虎と、投資を勉強している如月凛のやりとりを見てみよう。
如月凛「リスクって下げられるんですね」
綾小路英虎「組み合わせればね。これはコンサルティングの仕事でもあるよ」
凛「はい?」
英虎「お客さま側に2人の重要人物がいて、ひとりは頭脳派、もうひとりは感情派。その時々で、どっちが出てくるかわからない。僕は頭脳派で、頭脳派のお客さまが出てきたときは商談が成功するけど、感情派のお客さまが出てきたときは破断する。これってリスクあるよね?」
凛「はい。破断のリスクが50%あります」
英虎「どうしたらいい?」
凛「そうですね。ひでさんが、もっと人の感情を学ぶ」
英虎「えっ、なるほど。でもそれは時間がすごくかかりそう」
凛「冗談です。単純に、感情派のコンサルタントのメンバーを連れていけばいいんじゃないでしょうか」
英虎「冗談なのね。もっと感情も学ぶよ。で、実際もそのとおりやっていて、感情派で優秀なコンサルタントがいるので、僕はその人といつも一緒にチームを組んでやっている。そうすると、ありとあらゆるケースに対応できるので、ほぼリスクゼロで安心してコンサルティングの仕事を進められる」
凛「そうか。マッサージも一緒ですね。お客さまにいろいろなタイプがいるので、それぞれのタイプにあったセラピストがいればいるほど、クレームになるリスクは減らせます。ただ、お客さまのタイプを分けるのが難しいですが……」
英虎「顧客ベネフィットだね」
凛「顧客ベネフィット?」
英虎「お客さまがなんで凛さんの店をわざわざ選んだか。どういうベネフィットを満たしたいと思って来たのか。ベネフィットでタイプ分けするのが今はやってるよ。というか、僕がはやらせてるよ」
凛「あー、なんかわかります。40~50代で役員ぽいお客さま、よく来るんですが、一人ひとり求めてることが全然違うんで、“シニア男性ちょっと偉そう”みたいに、一括りにしちゃダメだって思ってました。顧客ベネフィットですね」
英虎「ごめん、この話は長くなるので、また別の機会にしよう。話を戻すと、株も同じように、異種のものを組み合わせることでリスクを下げられるということだね」
凛「よくわかりました」
英虎「じゃあ、どういうものを組み合わせると、リスクを下げられる?」
凛「うーん、ちょっと考えていいですか?」
英虎「もちろん。(……それにしても、マッサージの顧客ベネフィットおもしろそうだな。セラピストをその特徴でタグ付けして、あとは販売データと組み合わせれば、つくれそう。どういうタグをつくるかがポイントだな。ただ、このベネフィットをちゃんとつくろうと思うと、人間のかなり深いところまで踏み込んで考えないといけないな。どの辺がキーになるかな?)」
凛「ひでさん、何ぶつぶつ言ってるんですか。組み合わせ、わかりました。株価が反対に動くものの組み合わせがいいと思います。一方が上がったら、もう一方が下がる。頭脳派と感情派みたいな感じ」
英虎「OK。いいね。じゃあ、それって統計使うと、どうやったらわかる?」
凛「相関ですか?」
英虎「おーやるね。最近、本当に筋がよくなってきたよ」
凛「うれしいです。私は褒められて伸びるタイプなんで」
英虎「別に、無理に褒めてないよ。褒めるべきときにしか褒めてない」
凛「はいっ」
英虎「よし、ちょっと具体例で見てみよう。コロナ時(2019年7月~2022年6月)のセゾン情報と出光興産の株価の相関係数が-0.48で、負の相関関係になっている。変動係数は、セゾン情報が7.1%で、出光興産が13.6%。まあまあだね。グラフで見ると、こんな(図表1参照)感じ。このグラフから何か言えることある?」
凛「そうですね。2020年3月ごろコロナが本格化したあたりで、2社とも落ちてます。でもその後、セゾン情報はすぐに回復したけど、出光興産は落ち続けてた。逆に、2021年3月ごろのコロナ慣れしたあとは、その傾向が反対になってます」
英虎「褒めないよ。でもA+」
凛「私、大学のとき、A+取ったことない。人生初A+、うれしいです」
英虎「勝負はここからだ。リスクを下げるために、両方買えばいいってことは、まずわかるよね。でも振れ幅が違うから、そこはどうしたらいい?」
凛「そういうことですね。同じ金額で買うと、振れ幅が大きい出光興産の影響を大きく受けるということですね」
英虎「そうなんだよ。もっと丁寧にやりたくならない? 僕はO型なんで、細かいことまったく気にしないんだけど、データだけは別なんだよね」
凛「私は何型か知らないんですが、私も細かいことはまったく気にしないです。この前、スマホ落としましたし」
英虎「それは細かくないな。スマホはマズイだろ」
凛「でも、ちゃんと出てきました。落としても大抵のものは戻ってくるので大丈夫ですよ」
英虎「ちょっと大物感あるね。でも、ここは細かく見よう」
凛「はい。大事なところです」
英虎「答えから言うと、2つの株をどういう比率で組み合わせると、いちばんリスクが低くなるかを見ればいい。これは組み合わせを変えて計算するのがいちばん早い。結果として、出光興産30%+セゾン情報70%のときが変動係数がいちばん低くて、その数字はなんと4.7%。ほぼノーリスクといってもいいくらいになる。図表3に灰色で線を入れた」
凛「おー、もともとセゾン情報が7.1%で、出光興産が13.6%だったのが、2つ合わせると4.7%になる。なんか不思議ですね」
英虎「これがリスクヘッジのおもしろいところだね。お互いのいいところを使って、劇的にリスクを下げられる。たとえると、いい夫婦とはそういうものかもしれないね」
凛「深いですね。普通、変動係数といい夫婦って、まったく結び付かないですよ」
英虎「常に僕は深いよ」
組み合わせでリスクを低減するというのは、投資でももちろん使えるが、ビジネスでも、そして家庭でも使える。本質的にはお互いの違いを尊重しようという考えであり、ダイバーシティ&インクルージョンの時代にマッチしている。投資でも、ビジネスでも、家庭でも、よりよい組み合わせを追求していこう。
前田 英志
フィンファイ株式会社創業者 兼 代表取締役社長
多摩大学大学院MBA客員教授
※本記事は『お金から自由になる人生の設計書 年収にかかわらず経済的自立を実現する方法』(ごきげんビジネス出版)一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。
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