2023年8月、ASEAN主要6カ国の輸出動向
2023年8月のASEAN主要6カ国の輸出(ドル建て、通関ベース)は前年同月比11.9%減(前月:同10.6%減)と減少幅が拡大して6カ月連続の前年割れとなった(図表1)。
輸出の基調は昨年半ばまでコロナ禍からの経済活動の回復や商品市況の高止まりにより好調が続いたが、その後は欧米を中心とした外部環境の悪化や資源価格の軟化により増勢が鈍化し、昨年11月以降は前年比で減少傾向にある。
前月比では増加傾向に転じており、年末にかけて前年同月を上回る可能性はあるものの、中国向け輸出の回復が遅れている上、金融引き締めの影響による欧米経済の需要鈍化が見込まれるため、当面は輸出の持ち直しの動きが緩やかなものとなりそうだ。
ASEAN6カ国の仕向け地別の輸出動向を見ると、中国向け(同8.1%減)が4カ月ぶりに減少した東アジア向けは同10.5%減(前月:同7.6%減)となり2桁減となった。また北米向けが同7.6%減(前月:同5.6%減)、EU向けが同16.9%減(前月:同11.8%減)と低迷した。一方、東南アジア向けは同15.6%減(前月:同23.3%減)と減少幅が縮小したものの、大幅な減少が続いた(図表2)。
ベトナムの輸出動向
ベトナムの8月の輸出額(通関ベース、確定値)は前年同月比6.5%減(前月:同2.2%減)の327億ドルとなり減少幅が拡大して10カ月連続の前年割れとなった(図表3)。
輸出の基調は昨年後半から海外需要の鈍化や一次産品価格の下落により減少傾向にあるが、足元では前月比で増加傾向が続くなど持ち直しの動きがみられる。また輸入額は前年同月比5.8%減(前月:同11.6%減)の293億ドルと減少した。結果として貿易収支は+34.4億ドルの黒字となり、黒字幅は前月から3.7億ドル拡大した。
輸出を品目別にみると、輸出全体の約2割を占める電話機・同部品が前年同月比15.5%減(前月:同0.9%増)となり2ヵ月ぶりに減少すると共に、コンピュータ、電子製品・同部品が同6.4%増(前月:同28.4%増)となり増勢が鈍化した(図表4)。
またアパレル関連についても履物が同25.1%減(前月:同21.3%減)、織物・衣類が同14.1%減(前月:同11.6%減)となり、大幅な減少が続いた。
農林水産物を見ると、水産物(同13.0%減)と天然ゴム(同13.6%減)、コーヒー(同2.9%減)が減少した一方、野菜(同71.5%増)やコメ(同61.7%増)、カシューナッツ(同21.8%増)が増加するなど、品目によってばらつきが見られた。
輸出を資本別に見ると、全体の7割を占める外資系企業が同9.9%減(前月:同1.1%減)となり減少幅が拡大した。一方、地場企業は同3.7%増(前月:同5.2%減)となり6ヵ月ぶりの増加となった。
タイの輸出動向
タイの8月の輸出額(通関ベース)は前年同月比2.6%増(前月:同6.2%減)の242億ドルとなり、11ヵ月ぶりの増加となった(図表5)。
輸出の基調は昨年後半から海外需要の鈍化や一次産品価格の下落により減少傾向で推移しているが、足元では持ち直しの動きがみられる。また輸入額は前年同月比12.8%減(前月:同11.0%減)の239ドルとなり、3ヵ月連続の2桁減となった。結果として、貿易収支が+3.6億ドルとなり、前月の▲19.8億ドルから黒字化した。
輸出を品目別にみると、全体の約7割を占める工業製品が同4.6%増(前月:同1.7%減)と3ヵ月連続ぶりに増加した(図表6)。
製造品の内訳を見ると、自動車・部品(同23.1%増)と家電製品(同5.8%増)、機械・装置(同2.8%増)、電子製品(同2.1%増)は増加したものの、石油化学製品(同6.6%減)と金属・鉄鋼(同3.6%減)はそれぞれ減少した。また鉱業・燃料は同19.3%増(前月:同37.6%減)となり、石油製品(同19.0%増)を中心に6ヵ月ぶりの増加に転じた。
このほか、農産物・同加工品は同2.6%減(前月:同8.9%減)となり、4ヵ月連続で減少した。農産物・同加工品の内訳をみると、コメ(同10.8%増)とドリアン(同263.7%増)は増加したものの、天然ゴム(同32.9%減)やゴム製品(同22.2%減)、加工食品(同8.1%減)など減少した品目が多かった。
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