知識やノウハウ、手法を知るだけでは利益を出せない
本連載では、低位株の特徴や短期間で大勝ちできる銘柄の見つけ方、具体的なエントリー方法、そして投資戦略などについてお話ししてきました。しかしこうした知識やノウハウ、いわば「手法」が分かっても、利益を上げ続けるためには、それらを自分でどのように使いこなし、どうやって利益を出していくかが分からなければなりません。そのために必要なのは、利益確定とリスクの管理、この二つをまとめた「マネーマネジメント(資金管理)」という考え方です。
大きな果実を得るには、収益目標に対して取るべき適切なリスクを受け入れながら、損失を限定させることでトータルでプラス収益を出すという、資金管理上の戦略が必要になります。
例えば、1億円の元手がある人でも、慎重なあまり、そのうちの100万円だけで取引をしていては、1年後の投資成果はそれほど大きなものにはなりません。また、目標額は元手の倍の2億円なのに、50〜100円程度の利益を積み上げていても到底目標額には至りません。
株式投資のプロの世界では「利益の源泉の80%はマネーマネジメントにある」と言われています。ところが、私がいくら口を酸っぱくしてマネーマネジメントの重要性をお話ししても、知識やノウハウ、手法を身に付ければ儲かる、と思い込んでいる人が多いことは非常に残念に思います。
勝率60%のゲームでも、投資家の95%が損をする
心理学者であるバン・K・タープは『魔術師たちの心理学』という著書の中で、数学者のラルフ・ビンス教授が行ったある実験を取り上げています。ラルフ・ビンス教授は博士号を持つ40人を対象に、以下のような実験をしました。
①勝率が60%になるコンピューターゲームを100回してもらう
②手持ち資金は1000ドルで、毎回好きなだけ賭けてよい
実験の結果、最終的に元本を増やすことができたのは40人中たった2人。博士号の保持者であってもその95%が損を出したのです。個人投資家の9割が株で損をしている、という話を裏付ける結果となりました。その原因は、投資資金に対して過度なリスクを取ったことにありました。