日本の物価が安いワケ
では、なぜ日本の物価は安いのでしょうか?
それは、円安だからです。円の価値が低いからです。 今はアメリカの金利と日本の金利の差が開いているため、円安ドル高になっています。そこにロシアによるウクライナ侵攻でエネルギー価格高騰が加わり貿易収支は大きな赤字が続き、外国との取引における日本の儲けを示す経常収支も減り続けています。これは日本の国力が弱体化している証ですので、さらに円安の要因にもなります。
世界の基軸通貨である米ドルに対して、円の価値が下がっているわけですから、当然ながらユーロや中国人民元といった他の通貨に対しても円安になります。
実際には日本国内では物価が上がっていますから、日本に暮らしていると実感できないかもしれませんが、世界から見れば日本は物価の安い国なのです。
円安になると、 輸入品の価格が高くなる
外国人の旅行者にとっては、日本は物価が安いわけですが、日本人にとってはどうでしょうか。円安に振れている今、日本国内に住む私たちにとって、物価はどういった動きをするでしょうか。確実に言えることは、輸入品が高くなる、ということです。例えば、ワインやチーズといった嗜好品はかなり高騰しています。1年半ほどで約1.3倍になったものも多く、中には倍近く値上がりしたワインもあります。
また日頃の飲食料品も物価高に見舞われています。日本は、大豆や小麦といった原材料を輸入に頼っています。小麦は政府が一旦買い取って、価格を抑えて卸しているのですが、それでも食パンは1.05〜1.1倍に、菓子パンでは実質1.1倍になったモノがあります。
大豆は円安の影響をもろに受けて、価格が高騰しています。大豆を原材料とする醤油や味噌といった調味料は価格を上げざるを得ない状況です。納豆の値段が高くなったことを実感している人も多いのではないでしょうか。私が好きな銘柄は悲しいかな1.3倍になってしまいました。
他の輸入品に目を向けると珈琲は1.1〜1.2倍、ケチャップ、マーガリンは1.2〜1.3倍になりました。なたね油もほとんど輸入に頼っているわけですが、その影響を受けてマヨネーズも値上がりしました。キユーピーは、2023年4月からマヨネーズの価格を最大で21%値上げすると発表しています。マヨラーの私には痛手です。
家畜の飼料もほぼ輸入に頼っています。国産の肉(鶏肉、豚肉、牛肉)であっても、輸入しているエサが高くなれば、結果的に販売価格に反映させざるを得ないわけです。卵も同じですね。
値上げするのは、食料品だけではありません。今はあらゆる製品の原材料が輸入されています。わかりやすい例では、半導体もそうですし、アルミニウムの原料であるボーキサイトもそうです。そもそも製品をつくるために必要な電気の資源(天然ガスや石炭など)も輸入に頼っています。国産と言っても原材料を輸入に頼っているものは、値上げが必至だということです。
一方で、日本の金利が上がるか、上がらずともアメリカの金利が下がり、日本とアメリカとの金利差が縮まってくると、今度は円高に方向転換します。輸入品は安くなりますし、原材料も安くなります。ただし、輸出企業にとっては海外での価格が低くなるため、打撃を受けることになります。当然ながら、円安とは逆の動きになるのです。
・円安になれば、輸入品や原材料などが高くなる。
・円高になれば、輸入品や原材料などが安くなる。
私たちの生活に直結している商品の価格(物価)は、為替(円相場)に大きな影響を受けているわけです。それもこれも大本は金利です。主にアメリカの金利と日本の金利の差によって、円安もしくは円高に動くからです。
だからこそ、金利をもっと身近な存在だと感じてほしいと思います。
福本 眞也
FPコンシェル株式会社 代表取締役
1級ファイナンシャル・プランニング技能士