デジタル化において中国に後れを取る日本
米中と比較し、日本がデジタル化の波に乗り遅れていることは以前より多くの識者によって指摘されています。
新型コロナウイルス危機を契機に、日本ではオンライン診療の拡充や押印の旧習から電子署名への移行の促進など、新たな動向がみられました。
他方で、例えば、給付金の支給にデジタル技術がほとんど活用できないなどデジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れで生じた問題が多く露呈しました。日本のDXの遅れに警鐘を鳴らした新型コロナウイルス危機は、日本の経済社会と暮らしのデジタルシフトを加速する好機にもなると、著者は確信しています。
中国ではスマートフォン決済の急速な普及によりキャッシュレス社会が実現し、それがデジタルエコノミーの進展に大きく寄与しました。これほど急速にキャッシュレス社会が実現したのは、リープフロッグが起こったからだと考えられます。
急速なキャッシュレス社会を実現した「リープフロッグ」とは?
リープフロッグとは、ある技術やサービスに関して未成熟な社会が、最新の技術を取り入れることで、発展過程の段階を飛び越え、一気に最先端に到達する現象をいいます。
加入電話の通信網や銀行のATMサービスが行き届いていなかったアフリカ諸国で、一気にスマートフォンが普及したり、モバイル通信を利用した送金手段が普及したりしたのはその典型例で、クレジットカードの普及が遅れていた中国で、スマートフォン決済が急速に普及しキャッシュレス社会を実現させたのも同じ現象です。
日本でスマートフォン決済の普及が遅れているのは、すでに現金以外の、キャッシュレス決済手段が成熟しているからです。
1980年代にはすでにクレジットカード決済がかなり普及していました。加えて、前世紀末からさまざまな電子マネーが登場し、現金以外の決済法が普及したため、スマートフォン決済に他の決済手段より高い利便性を感じる人は少なく、それが普及の妨げになっているのです。
日本のプラットフォーマー企業が、ポイント加算や割引のインセンティブを付け、スマートフォン決済の普及に躍起になっているのはそのためです。
日本では決済方法に限らずありとあらゆる社会インフラが成熟しているため、最先端のデジタル技術への移行が遅れるという皮肉な現象が起きています。既存の枠組みに不自由を感じるユーザーが少ない日本よりも、社会インフラが未成熟な中国で最先端技術が急速に普及しているのは、リープフロッグ現象なのです。
キャッシュレス社会への急進展に加え、AI技術の活用で後進国から最先進国に一気にジャンプアップしたゴミ分別収集もその一例です。中国のICT企業は、AIの画像認識技術を活用しゴミを自動的に分別するサービスを作り上げました。
中国でゴミの分別収集が始まったのは2019年夏のことです。1970年代にゴミの分別の取り組みが開始された日本とは顕著な違いです。中国のゴミ分別制度は上海で先行し、現在、全土に広がりつつあります。
けれども、著者を含め、学校などでゴミ分別の必要性についての教育を受けていない40代以上の世代には、ゴミの分別に戸惑い適応できない人が少なくありません。AIを活用したゴミの自動分別サービスは、そうした問題を解決するために開発されたのです。
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