金融機関は金融商品を「販売する」プロ
老後の資産運用・管理を行う上で気をつけるべきことは、「退職金投資デビュー」をまとまったお金でやらないようにすることです。次にこれも大切なことですが、老後の資産運用を金融機関には頼らないようにすることが大切です。
こんなことをいうと、「え!金融機関に頼っちゃいけないって……、でも金融機関ってプロなんでしょう?」という方が多いだろうと思います。たしかに彼らはプロです。でも何のプロかというと、金融商品を販売するプロなのです。決して資産運用のプロではありません。
もちろん、金融機関の中には資産運用のプロといわれる人たちもいます。でもそれらの人たちの多くは、運用会社のファンドマネージャーであったり、銀行や証券会社のトレーディング部門で働く人たちであって、窓口であなたに応対してくれる人は、決して運用のプロでも投資のプロでもありません。
「でもこの前、店頭に行ったときに名刺をくれたけど、“ファイナンシャルプランナー”って書いてありましたよ。それって資産運用相談の専門家ってことじゃないの?」
たしかに金融機関の社員の多くは会社から指示されてファイナンシャルプランナー(以下、FP)の資格を取得している人もいます。だからといって、彼らが極めて中立公正な立場で、あなたに資産運用のアドバイスをしてくれるか、というとそれは疑問です。忘れてはいけません。金融機関の営業社員の仕事は、自社の金融商品を一人でも多くのお客さんに買ってもらうことです。
FPの資格を持っているとしても、それはいかにも専門家らしく見せることで、自社の商品を買ってもらいやすくしようと考えているからです。いわば権威づけのようなものです。
その証拠にFPだからといって、別に相談業務自体でお金を取っているわけではありません。金融機関の窓口での相談で相談料を取られた、というのはあまり聞いたことがないでしょう。それは相談自体をビジネスとしているわけではなく、あくまでも金融商品を販売することが目的だからです。本当にきちんと相談して一定のアドバイスを受けようと思ったら、やはり相談自体をビジネスとして専門的にやっているFPにきちんとお金を払って相談すべきです。
このFPの利用法については、次回詳しくお話ししますが、一般的には無料相談というのはあまりお勧めしません。ただし、自治体の役所などでの無料相談は必ずしもこの限りではありません。なぜなら、その運営費用はおそらく税金で賄われているはずだからです。無料の裏で、いったい何で儲けているのだろうと考えることが大切です。
投資は人任せではなく「自分の判断」で行うもの
また、仮に資産運用のプロだとしても、その人のいうとおりに投資をして、必ず儲かるというわけでもありません。あくまでも、投資は自分の判断と責任において行うべきものです。したがって、ある程度自分で勉強し、調べた上でわからない部分や知りたいことを聞いてきちんと理解したいのであれば、相談料を払った上でFPに相談するのがよいと思います。そして手数料の安いネット銀行やネット証券を利用すればいいのです。でもそういったことに不慣れな方は、対面型の金融機関を利用しても構いません。
ネット銀行やネット証券ではなく、対面型の金融機関を利用するのであれば、あくまでも自分が投資を検討している金融商品の内容説明だけに絞って、確認する目的で利用したほうがいいでしょう。
金融商品、なかでも投資信託というのは耐久消費財等の商品とは違って、一度買ったら長期にわたってコストを負担する必要があります。それだけに金融機関に勧められるままに買うのではなくて、自分でわかるまで、納得するまで比較検討することが大切ではないでしょうか。