低金利の時代には「お金に働かせて稼ぐ」ことが必要
筆者の著書である『老後貧乏は避けられる』の第4章では、「人的資本」と「金融資本」のお話をしています。人的資本は「人が働いて稼ぐ力」、それに対して金融資本は「お金に働かせて稼ぐ力」のことです。
人が働いて稼ぐ力はよくわかりますが、お金に働かせて稼ぐ力とはいったい、何を指すのでしょうか?
具体的にいえば、金融商品を購入し、そこから利息や配当、分配金といった収益を受け取ることです。ところが今は非常に低金利の時代が続いています。1年ものの定期預金に預けても金利はごくわずかしかつかないという状況です。かつてのような3%や5%といった金利は望むべくもありません。
一方、株式や投資信託は元本が成長する可能性はあるものの、ひょっとしたら損をするかもしれないという不安で、経験のない人にとっては近寄りがたいという印象があります。
そんななかで金融商品を購入して、安全に利益を得ることは可能なのか? という素朴な疑問が出てくると思います。
正しい方法であれば「投資」で安定的な資産形成が可能
どうも多くの人は資金を預貯金においておくか、さもなければ株でばくちを打つという両極端しかない、と勘違いをしているようです。もちろん預貯金というのは安全資産であることは事実ですし、一定の割合で持っておくことはとても大切なのですが、かといって預金ばかりにしておけば安心かというと、そうでもありません。今後もしインフレが大きく進行した場合は、貨幣価値が低下するおそれもあるからです。
一方、株式はばくちかといえば、これはそうだともいえるし、そうでないともいえます。つまり株式投資そのものがばくちということではなく、その扱い方によってはばくちにもなるし、安定的な資産形成の手段にもなり得るということなのです。
預金のような安全資産と、株式のような成長資産を自分が許容できるリスクの度合いに応じて、分散して保有するのが大切です。平均寿命が延びたことによって、60歳以降の生活も20年から30年ぐらいは当たり前になってきました。その間に起こり得るリスクに備えるためには、それまでに蓄えた金融資産を有効に活用することを考えなければなりません。
ただし、お金を働かせることに懸命になるあまり、熱中しすぎないようにすること、そして金融機関のいわれるままに、何も考えずに金融商品を購入すること、さらには間違ったやり方で投資をすることには気をつけなければなりません。特に退職した後は、もし大きな失敗をしてしまったら取り返しがつかなくなるかもしれません。
本連載ではそのような投資に関すること、特にシニアが投資するにあたって注意しなければならないことについて、いくつかのポイントについてお話ししていきたいと思います。