(※写真はイメージです/PIXTA)

YouTube等で有名なインフルエンサーのなかには、自動車保険や火災保険等の例外を除いて「保険はいらない」という持論を展開している人がいます。その主な理由は「日本の社会保障制度は充実している」というものです。しかし、保険が必要かどうかを判断するうえで考えるべきポイントはほかにもあり、それらを見過ごすと取り返しのつかないことになる危険性があります。本記事ではそれらのポイントについて解説します。

社会保障制度や貯蓄でカバーしきれない部分を補うのが「保険」

保険の要否を判断するうえで最も重要な視点は、そもそも、民間の保険は「社会保障制度や貯蓄でカバーしきれない部分を補うもの」だということです。生命保険協会も、その点は公式HP等で明言しています。

 

わが国の社会保障制度が手厚いといっても、それはあくまでも「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法25条1項)を保障するためのものです。必要最低限ではあっても、それだけで十分というものではありません。

 

発想としては老後の生活を保障するための「公的年金」と共通です。公的年金についても、それだけでは生活できないことを前提に「iDeCo」「NISA」等を利用して投資をすべきという考え方が主流になりつつあります。

 

では、社会保障制度や貯蓄でカバーしきれないケースとはどのようなものでしょうか。典型的なものを挙げると以下の3つです。

 

【社会保障制度でカバーしきれない典型的な3つのケース】

・死亡した場合の遺族の生活費や子どもの教育費等

・働けなくなったときの生活費や子どもの教育費等

・病気等で治療が長期化したときの医療費の自己負担額・生活費等

 

それぞれについて説明します。

 

◆死亡した場合の遺族の生活費や子どもの教育費

第一に、死亡した場合の遺族の生活費や子どもの教育費等の問題です。死亡した場合には前述の通り「遺族年金」の制度があります。しかし、遺族年金だけで賄うことは不可能なケースが多いとみられます(ただし、配偶者の収入等の事情にもよります)。

 

そこで、万一があった場合に遺族が生活していくうえで足りなくなる金額がいくらなのか計算して、その不足分について生命保険に加入することをおすすめします。

 

保険の種類としては、「収入保障保険」をおすすめします。これは、保険期間を「60歳まで」「65歳まで」等に設定でき、その間に亡くなったら遺族に毎月、給料のように一定額が支払われるものです。何事もなければ、毎月、保険金の総額が減っていくしくみになっているので、その分、保険料が割安です。

 

ただし、事情によっては、毎月一定額を受け取るのではなく、一度にまとまった額を受け取れるほうが良い場合も考えられます。その場合には、保険期間中いつ亡くなっても同じ額が支払われる「定期保険」をおすすめします。

 

これらはいずれもいわゆる「掛け捨て」の保険です。支払った保険料が戻ってこないことは一見もったいないと感じられるかもしれません。しかし、貯蓄性の保険(終身保険、養老保険等)は保険料がきわめて割高で、その反面、十分な額の保障を備えることができません。また、マイナス金利政策が続き利率が極端に低い今日では、貯蓄の機能も著しく低下しています。ごく一部の例外はあるものの、現時点においては、基本的には、貯蓄と保険は分けて考えるのが得策といえます。

 

◆働けなくなったときの生活費や子どもの教育費

第二に、働けなくなったときの生活費や子どもの教育費の問題です。サラリーマンには前述のように「傷病手当金」の制度があり、手取りのかなりの部分をカバーしてもらえますが、受給できるのは1年6ヵ月までです。その後は「障害年金」を受けることになりますが、それだけでは自分と家族の生活費、子どもの教育費をまかなうことはできないケースが多いと考えられます(配偶者の収入等の事情にもよります)。

 

そこで、不足分を補うための保険が「就業不能保険」「所得補償保険」です。

 

いずれも、働けなくなった場合に毎月決まった額を受け取れる保険ですが、受給できる条件が異なります。

 

「就業不能保険」は障害等級や要介護度の一定の要件をみたした場合に保険金を受け取れます。つまり、障害年金を受け取れる段階に至れば、毎月、保険金を受け取れるということです。この「就業不能保険」が向いているのはサラリーマンです。なぜなら、最初の1年6ヵ月間「傷病手当金」を受給できるからです。

 

これに対し、「所得補償保険」は、障害年金の受給要件をみたさなくても、「ドクターストップ」がかかれば日割りで保険金を受け取れます。したがって、傷病手当金の制度のない自営業・フリーランスに向いています。

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和泉 昭子

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