為替介入とは
為替介入は正式には「外国為替平衡操作」といいます。為替相場が急激に変動した場合に、通貨当局(日本では財務省と日銀)が通貨の売買を行って変動を抑えることをいいます。「円安ドル高」の局面では「ドル売り・円買い」を行って円高へと誘導し、「円高ドル安」の局面では「円売り・ドル買い」を行って円安へ誘導します。
今回は「円安ドル高」が進み1ドル=150円に達し、その直後に円が1ドル147円台まで急騰していることから、「ドル売り・円買い」の為替介入が行われたとの観測が出ているのです。
1ドル=150円に達したのは2022年10月以来です。そして、同年10月21日・24日に相次いで「ドル売り・円買い」の為替介入が行われたことが明らかになっています。なお、為替介入の実施状況については毎月末に財務省HPで公表されています。したがって、10月3日に為替介入が行われたか否かと介入の規模(金額)は、いずれ10月31日に明らかになります。
為替介入の財源は「外貨準備」
「ドル売り・円買い」の為替介入を行う場合、財源として米ドルが必要となります。その米ドルは「外貨準備」から支出されます。
「外貨準備」は、国の一般会計とは別に財務省が所管する「外国為替資金特別会計」(外為特会)と、日銀が保有する外貨です。
財務省によれば、外貨準備高は8月末日時点で1兆2,511億7,100万ドルでした(9月7日公表)。このうち、事実上、為替介入に使えるのは以下の通り「証券」「預金」の合計1兆1,223億8,600万ドルです。「証券」は多くを米国債が占めているとみられ、米国債は市場ですぐに売却して米ドルに換金できるからです。
【外貨準備高における「証券」「預金」の金額(2023年8月末日時点)】
・証券:9,866億7,500万ドル
・預金:1,357億1,100万ドル
前回「2022年10月」の為替介入の内容・効果は?
為替介入の目的は、急激な「円安ドル高」に歯止めをかけることです。そこで、前回2022年10月の「ドル売り・円買い」の為替介入について、その内容・規模と効果がどのようなものだったか、振り返ってみましょう。
前回の為替介入は2022年10月21日と24日に相次いで行われました。金額の規模は10月21日が5兆6,202億円、24日が7,296億円で、合計6兆3,499億円でした。
そして、同年10月末と9月末の外貨準備高(証券と預金)の増減をみると、証券が「-439億4,100万ドル」、預金が「+9億500万ドル」でした([図表]参照)。このことから、主に米国債券が米ドルに換金されて為替介入の財源に充てられたとみられます。
この為替介入によって、1ドル=150円台だったのが140円台後半に抑えられました。それからしばらくの間140円台後半で推移したのち、徐々に「円高ドル安」の傾向になり、その後、円相場は2023年1月14日に1ドル=127.99円(終値)にまで上昇しました。
このことをさして、為替介入による効果があったということもできます。「いざというときには為替介入するぞ」という姿勢を示すことで、投機的な「円売り・ドル買い」の動きが一定程度抑えられるという効果があるからです。ただし、円相場が1ドル=120円台にまで上昇したのは、アメリカの金融当局の動きなど、他の要素が影響を与えた可能性もあります。
しかし、2023年1月14日をピークに、再び「円安ドル高」の傾向に転じました。そして、2023年10月3日にニューヨーク外国為替市場で1ドル=150円のラインを超えました。その直後に突如として円が1ドル=147円台まで急騰したということで、財務省・日銀による為替介入が行われたとの観測が流れているのです。