(※画像はイメージです/PIXTA)

10月3日深夜に円相場が一時1ドル=150円超にまで下がりました。これは2022年10月以来の水準です。しかし、その直後に円が急騰し、1ドル=147円台まで達する場面がありました。急激な値動きから、財務省・日銀が「為替介入」に踏み切ったのではないかとの観測が出ています。為替介入とは何か、本来どのようなケース・タイミングで行われるものなのかについて、本記事で解説します。

為替介入を行う「効果的なタイミング」とは

為替介入は、国による「相場操縦」の側面があるので、慎重に行わなければなりません。また、財源も前述の通り外貨準備高の限度に限られています。したがって、「円安ドル高」の要因を見極めたうえで、最も効果的とみられるタイミングで行う必要があります。

 

昨今の「円安ドル高」の最大の要因とされているのは、日本とアメリカの金利差です。

 

日本では1990年代末期から長期にわたって「超低金利」の状態が続いています。これに対し、アメリカでは2021年の終わりから相次いで金融当局による「利上げ」が行われています。それが、金利の低い「円」を売り、金利の高い「ドル」を買うという動きにつながり、「円安ドル高」を招いています。

 

アメリカでの「利上げ」は、新型コロナウイルス禍の下で引き下げていた金利を再び引き上げるものです。

 

すなわち、2020年から始まった新型コロナウイルス禍のなか、アメリカをはじめとする多くの国では経済が停滞し、その対策として「利下げ」を行いました。金利を引き下げることにより、企業や個人が融資を受けやすくなります。また、金融機関に預けておいても金利がつかないので、投資する人も増えます。そして、市場に流通するお金の量が増えます。

 

これが功を奏し、アメリカでは経済が回復し、それによって「インフレ」が発生しました。したがって、今度は「インフレ退治」のため、一転して相次ぐ「利上げ」を行っているのです。

 

これに対し、日本では新型コロナウイルス禍に見舞われた時点ですでに超低金利の状態だったので、「利下げ」による経済対策をとる余地はありませんでした。そして、今なお好景気とはいえない状態であり、金融当局としては「利上げ」に転じることは難しい状態です。日銀は今後も「金融緩和政策」を当面維持する方針を表明しています。

 

一方で、昨今の「円安ドル高」は国民生活に大きな影響を及ぼしています。2022年以降のロシアによるウクライナ侵攻によって世界的に燃料価格が高騰し、そこに円安による物価高が追い討ちをかけています。このまま日米の金利差が大きい状態が続けば、「円安ドル高」の傾向も続くことになります。

 

しかし、だからといって今すぐ「利上げ」に転じればいいというわけでもありません。経済が回復したとはいえない現状で「利上げ」を行うと、企業は融資を受けにくくなり、住宅ローンを「変動金利」で借りた人は利息の支払いが苦しくなるなどの影響が発生するおそれがあります。おいそれと「利上げ」をするわけにいかないなかで、一時的な措置として「為替介入」を行うことは、金融当局にとっては苦肉の策だといえます。

 

今回、金融当局は為替介入を行ったか否かについて明言を避けています。しかし、もし行われたとすれば、1ドル=150円に達した直後に円が急騰していることから、財務省と日銀の間であらかじめ「1ドル=150円になったタイミングで介入する」という取り決めがなされていた可能性が考えられます。

 

この「1ドル=150円になったタイミング」というのは、前回2022年10月の為替介入と同じです。したがって、今後は、1ドル=150円に近付いたら「為替介入が行われて円が急騰する」という観測が市場に流れ、「円安ドル高」に歯止めをかける効果が考えられます。

 

為替介入が実際に行われたかどうかは10月31日になればはっきりします。また、仮に為替介入が行われたとして、その効果の有無や程度は、今後の推移を見守り、あとで検証する必要があるといえます。

 

 

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