徳井氏は「バレ元」ではないと説明したのだが…
記事は方向性がすでに決まっていて、記者は徳井氏の悪意を裏付けるために取材に来ていた。しかし、筆者は「バレ元」を否定し、その根拠を文章にして記者に手渡している。以下がその原文だ。
徳井氏のケースは一見すると「バレ元」のように思えるが、①徳井氏自身が会社の代表者である。②会社は滞納があって税務署の監視下にあった。③税理士が申告を促している。などのことから「バレ元」ではない。
それでも徳井氏が節税法人を設立していることから、税金に無知だったとの言い訳は通らない。「脱税の意図」がなかったと主張するには、ひたすらルーズだったと釈明するしかないだろう。しかし、本当にルーズであったとしても、申告納税制度に背を向ける行為であったことは否定できない。
また、徳井氏が主宰する法人が申告していなかった所得が約1億1,800万円もあったことから、マルサが無申告を理由に強制調査に着手してもおかしくない状況だった。筆者を取材した記者も、マルサが動かないのは著名人を優遇しているのではないかと疑っていた。
しかし、筆者は「徳井氏がそれほど悪質な行為をしているようには思えない。また、無申告についても、もし、この事案で2年前にマルサが動いていれば申告漏れはもっと小さかったはずで、税務署が長年放置したことが脱税犯を作り出してしまったとの批判を免れない。だから絶対にマルサは動かない」と説明し、記事の方向性と合わないなら筆者の名前を使わないと約束させたのだが、あっさり裏切られた。
筆者の想定どおり強制調査は見送られた。マルサがいかに調査資料を分析しても、徳井氏には一罰百戒を与えるような悪質な行為がなかったことの証明だ。
週刊誌がどのように書こうがマルサが影響を受けることはない。しかし、人の名前を使って他人を追い込む行為に怒りを覚える。
上田 二郎
元国税査察官/税理士