微信の利便性を生かす同程、海外に強みのトリップ
中国ではOTA(オンライン・トラベル・エージェント)の存在感が強い。代表格は最大手のトリップドットコム・グループ(携程集団、09961)と同程旅行控股(00780)だ。
21年市場シェア(取引総額ベース)は、最大手のトリップが36.3%で、美団(メイトゥアン、03690)が20.6%、同程が14.8%と続く。両社はテック系大手も絡んだ資本提携関係にある。百度(09888)がトリップに10%余り出資。同程には、トリップが24.99%、テンセント(00700)が21.98%出資している。トリップは同程の大株主で、売上高も約3.8倍の規模だ(23年6月中間期)。
ユーザー属性は、トリップはホワイトカラー層や都市部市民が多いイメージで、同程は若者や中年層、地方部の市民と親和性が高いとされる。
後者の背景には、テンセントの微信(WeChat)から直接予約・支払いが可能という強みがある。月間平均アクティブユーザーの約80%が微信内の同社ミニアプリを通じてアクセスしており、ワンストップで完了する簡便さが受けているよう。
中国国内業務が全体の9割超を占め、旅行ブームの恩恵を享受している。21年時点で売上高はすでに19年実績を超えていた。
一方、トリップは主力の「携程(Ctrip)」のほか、「Qunar.com」「Trip.com」「Skyscanner」のブランドを展開する。海外事業の売上比率が一時35%を超える(19年4~6月期)など、国際業務に強いのが特徴だ。だが、同事業がコロナ禍で苦戦し、業績に影響を与えたことは容易に推察できる(直近詳細は非公表)。
EBITDAマージン(EBITDA/売上高)は、同程が比較的安定しているのに対し、トリップは落ち込みが激しい時期もあった。売上ベースでも20~22年にかけて19年実績の半分程度にとどまった。
もっとも、中国で海外旅行の人気自体は高い。ネックである航空会社の輸送力やビザの問題などの解決が待たれるところ。同社は中国の観光業(国内+海外)の完全回復は24年になるとの見方を示している。
奥山 要一郎
東洋証券株式会社
上海駐在員事務所 所長
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