(写真はイメージです/PIXTA)

東京都心Aクラスビルの空室率は、在宅勤務の普及などを背景に上昇し、2014年第3四半期以来となる5%台に達しました。本稿では、ニッセイ基礎研究所の吉田資氏が、東京都心部Aクラスビル市場の動向を概観し、2027年までの賃料と空室率を予測します。

3.東京都心部Aクラスビル市場の見通し

3-1.Aクラスビルの新規供給見通し

三幸エステートの調査によれば、2023年は、「住友不動産東京三田ガーデンタワー」や「麻布台ヒルズ森JPタワー」、「虎ノ門ヒルズステーションタワー」、「SHIBUYAタワー」等、港区を中心に大規模ビルの竣工が相次ぎ、新規供給面積は前年の約3倍となる約19万坪が見込まれている。

 

2024年は約7万坪に一旦落ち着くものの、翌2025年は「高輪ゲートウェイ」や「T-2Project」、「芝浦プロジェクトS棟」等の大規模開発が予定されるなか、新規供給面積は再び約20万坪に達する見通しである。また、2026年以降も10万坪を超える新規供給が続く見込みである(図表-21)。

 

 

 

3-2.Aクラスビルの空室率および成約賃料の見通し

東京都の就業者数は、情報通信業等を中心に増加し、オフィスワーカーの割合の高い非製造業では人手不足感が強いことから、東京都心部の「オフィスワーカー数」が大幅に減少する懸念は小さい。

 

また、情報通信業や金融業・保険業等では、事業所の開業率が廃業率を大幅に上回っている。今後も、従業員にとって快適なオフィス環境を整備する取組みが継続し、ミーティングスペースや、web会議用スペースを充実させる企業の増加が期待される。

 

一方、拠点集約や賃貸面積の一部解約、サードプレイスオフィス利用への変更等、オフィス戦略の見直しが継続すると考えられる。また、フリーアドレスの導入が広がるなか、スペース利用の効率化が進むことが予想される。

 

こうしたなか、都心5区では、多くの大規模開発が進行中である。2024年は、新規供給が一旦落ち着くものの、2025年は約20万坪の大量供給が予定されており、2026年以降も10万坪を超える新規供給が続く見通しである。

 

以上を鑑みると、東京都心部Aクラスビルの空室率は、2024年にやや改善した後、6%前後で推移することが予想される(図表-22)。

 

また、成約賃料は、現時点(2023年第2四半期)と同水準となる2万6千円近辺で推移すると予測する(図表-23)。

 

 

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年9月28日に公開したレポートを転載したものです。

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