(写真はイメージです/PIXTA)

中国経済の第2四半期の景気インデックスをみると、前四半期のGDP成長率(前年同期比6.3%増)を大幅に下回る結果となっています。本稿では、ニッセイ基礎研究所の三尾幸吉郎氏と三浦祐介氏が、中国経済の第2四半期のGDP成長率を分析し、10月18日に公開予定の第3四半期のGDP成長率について、予測して解説します。

3.需要面の3指標

個人消費の代表指標である小売売上高を見ると(図表-9)、7・8月は前年同期比3.5%増と、第2四半期(同10.8%増)から低下した。財、飲食とも、上海ロックダウンの反動で年初から4月にかけて伸びが高まった後、昨年のベース効果のはく落もあり、伸びの鈍化が続いている。

 

投資の代表指標である固定資産投資(除く農家の投資)を見ると、7・8月は前年同期比1.6%増と第2四半期(同3.1%増)から低下した。

 

内訳を見ると(図表-10)、7・8月の不動産開発投資が前年同期比11.6%減と第2四半期の同9.5%減からマイナス幅を拡大させた。

 

製造業の投資については、前年同期比5.7%増と第2四半期(同5.5%増)から伸びを小幅に高めた一方、インフラ投資は、同5.8%増と第2四半期(同9.8%増)から低下した。

 

 

所有形態別にみても(図表11)、民間、国有・国有資本ともに伸びが低下(それぞれ、0.6%減→2.0%減、7.1%増→5.5%増)しており、不動産開発投資の低迷やインフラ投資の減速が足元で下押ししていることがうかがえる。

 

輸出(ドルベース)の状況を見ると(図表-12)、7・8月期は前年同期比11.6%減と第2四半期(同4.7%減)からマイナス幅を拡大させた。なお、輸入についても、同9.8%減と第2四半期(同6.7%減)からマイナス幅が拡大している。

 

4.その他の4指標と景気の総括

以上で概観した供給面3指標と需要面3指標に、電力消費量、道路貨物輸送量、工業生産者出荷価格、通貨供給量(M2)の4指標を加えた10指標に関して、それぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば“○”、下向きであれば“×”、横ばいなら“-”として一覧表にしたのが図表-13である。

 

なお、3ヵ月前比とした理由はGDP成長率(前期比)を予測するためだ。その四半期に“○”が多ければ景気が加速したことを、“×”が多ければ景気が減速したことをそれぞれ示唆している。

 

 

まず評価点(〇の数)を見ると、第2四半期は4月が5点、5月が3点、6月が1点と、分岐点(5点)から徐々に低下し、GDP成長率(前期比)も減速していた。

 

第3四半期については、7月・8月がそれぞれ4点、3点と、いずれも5点を下回っているものの、5・6月からは改善しており、GDP成長率(前期比)は若干加速する可能性がある。

 

需要面に焦点を当てると、小売売上高および輸出は第2四半期には、5・6月と“×”に減速した後、7・8月も “×”が続いている。固定資産投資は、第2四半期を通じて“×”の後、7月には一時“○”もみられたが、8月には再び “×”へと悪化しており、需要は弱まっているようだ。

 

供給面を見ると、鉱工業生産は、第2四半期には4月が“×”、5・6月が“〇”であった。その後、第3四半期に入ると、7月は引き続き“〇”だったが、8月には“×”へと悪化している。

 

もっとも、製造業PMIは、第2四半期には3ヵ月ともに“×”であったが、第3四半期に入ると2ヵ月とも“〇” と改善に転じている。生産が持続的に回復するか、今しばらく様子を見る必要がありそうだ。

 

非製造業PMIについては、4月まで“〇” と加速していたが、5月以降、8月にかけて“×”が続いており、足元で悪化している。

 

その他の指標を見ると、電力消費量は昨年12月以降6ヵ月連続で“○”の後、直近は3カ月連続で“×”となっているほか(図表14)、道路貨物輸送量も今年1月以降5カ月連続で“○”であったが、6・7月は“×”(8月“○”)となっている(図表15)。

 

 

工業生産者出荷価格(PPI)については、第2四半期は全て“×”であったが、第3四半期に入ると2カ月連続で“○”となっている。 通貨供給量(M2)は、4月以降8月にかけて“×”が続いている(図表16)。総じて一進一退の状況であり、景気の方向感はまだ判然としない。

 

最後に、鉱工業生産、サービス業生産、建築業PMIの3つを説明変数として、GDP成長率(前年同月比)を推計した「景気インデックス」を確認しておこう。

 

推計結果は7月が前年同月比3.7%増、8月が同4.6%増で、7-8月期は前年同期比4.2%増である(図表-17)。前四半期(1-3月期)のGDP成長率は前年同期比6.3%増だったので、それを大幅に下回っている。

 

 

したがって、10月18日に公表される7-9月期のGDP成長率(前年同期比)は、9月の景気次第で振れるとは言え、4%台となる可能性が高いだろう。なお、現在の市場コンセンサスは4.3%前後となっている。

 

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※本記事記載のデータは各種の情報源からニッセイ基礎研究所が入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本記事は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
※本記事は、ニッセイ基礎研究所が2023年9月29日に公開したレポートを転載したものです。

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