親が支払った「子供名義の生命保険」に高額な贈与税が発生
【相続税の課税財産-保険金】
毎年保険料相当額の贈与を受けその保険料の支払いに充てていた場合における受取保険金は、相続により取得したものとはみなされないとした事例(全部取消し)(昭59.2.27裁決)〔裁決事例集第27集231頁〕
【裁決要旨】
未成年者である請求人が受け取った保険金については、
1)その保険契約を被相続人が親権者として代行し、保険料の支払いに当たっては、その都度被相続人が自己の預金を引き出して、これを請求人名義の預金口座に入金させ、その預金から保険料を払い込んだものであること
2)保険料は、被相続人の所得税の確定申告において生命保険料控除をしていないこと
3)請求人は、贈与のあった年分において贈与税の申告書を提出し納税していること
から請求人は贈与により取得した預金をもって保険料の払込みをしたものと認められるので当該保険金を相続財産とした更正処分は取消しを免れない。
定期贈与について
国税庁タックスアンサー№4402において、「毎年、基礎控除額以下の贈与を受けた場合」
親から毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受ける場合には、各年の受贈額が110万円の基礎控除額以下ですので、贈与税がかからないことになりますか。
A
定期金給付契約に基づくものではなく、毎年贈与契約を結び、それに基づき毎年贈与が行われ、各年の受贈額が110万円以下の基礎控除額以下である場合には、贈与税がかかりませんので申告は必要ありません。
ただし、毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合には、契約(約束)をした年に、定期金給付契約に基づく定期金に関する権利(10年間にわたり100万円ずつの給付を受ける契約に係る権利)の贈与を受けたものとして贈与税がかかります。
なお、その贈与者からの贈与について相続時精算課税を選択している場合には、贈与税がかかるか否かにかかわらず申告が必要です。(相法21の5、24、措法70の2の4、相基通24-1)
と、あります。毎年の贈与額が同じであっても、贈与は個別に成立します。タックスアンサーに記載があるとおり、「毎年100万円ずつ10年間にわたって贈与を受けることが、贈与者との間で契約(約束)されている場合」などという当初贈与契約書は作成することはないため、毎年同日付、毎年同額での贈与について全く問題ありません。
なお、連年贈与も当然ながら制度としてありません(注3)。
連年贈与した場合の贈与税の計算方法(注3)
昭和33年から50年にわたり、同一人物から3年以内の贈与は累積して贈与税を計算するという措置がありました。具体的には次の計算方式によります。
①最後に贈与を受けた年の贈与財産だけで贈与税額を計算する。
②その贈与者から贈与された各年の財産の価額から、それぞれ一定額(昭和33年から38年までは10万円、昭和39年以降は20万円)を控除した金額の合計額をもとに、贈与税額を計算する。そして、そこから既に課税された贈与税額の合計額を控除する。
③①と②の合計額を3年目の贈与の年に申告する。
この制度はもう存在しません。したがって、毎年同月日に同金額を贈与して問題ありません。
(参照)
昭和49年旧相続税法第21条の6(3年以内に同一人から贈与を受けた場合の贈与税額)
その年において贈与に因り同一の贈与者から10万円を超える価額の財産(その取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるものに限る。以下本条において同じ。)を取得した者がその前年又前々年において当該受贈者から贈与に因り各年10万円をこえる価額の財産を取得したことがある場合においては、その者に係る贈与税は、前条の規定にかかわらず、その年において贈与に因り取得したすべての財産の価額の合計額につき前2条の規定により算出した金額と第1号に掲げる金額から第2号に掲げる金額を控除した金額(当該贈与者が2人以上ある場合には、これらの者につきそれぞれ第1号に掲げる金額から第2号に掲げる金額を控除した金額を控除した金額の合計額)との合計額により、課する。
①その年以前3年以内の各年において当該贈与者から贈与に因り取得した財産の価額のうちそれぞれ10万円をこえる部分の合計額を前条に規定する課税価格とみなし、同条の規定を適用して算出した金額
②イ及びロに掲げる金額の合計額(当該合計額が第1号に掲げる金額をこえる場合には、当該金額)
イ その年の前年又は前々年において当該贈与者から贈与に因り取得した財産の価額が当該各年において贈与に因り取得したすべての財産の価額の合計額のうちに占める割合をそれぞれ当該各年の贈与税の税額(利子税額、過少申告加算税額、無申告加算税額、重加算税額及び延滞加算税額に相当する税額を除く。)に乗じて算出した金額の合計額
ロ その年において当該贈与者から贈与に因り取得した財産の価額が同年において贈与に因り取得したすべての財産の価額の合計額のうちに占める割合を当該合計額につき前2条の規定を適用して算出した金額に乗じて算出した金額
******************参考******************
※1:民法549条
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
※2:贈与契約の事例ですが、「贈与契約に顕名なしも、代理行為は有効(週刊T&Amaster2022年10月3日号・No. 948)審判所、贈与手続は請求人に包括委任と判断し原処分を全部取消し」についても併せてご参照ください。
伊藤 俊一
税理士
2025年2月8日(土)開催!1日限りのリアルイベント
「THE GOLD ONLINE フェス 2025 @東京国際フォーラム」
来場登録受付中>>
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】