納税を巡る“税法のスペシャリスト同士”の攻防戦…結末は
ターゲットの直近分の確定申告書を確認すると、これまで年間500万円程度の所得で申告していたのだが、なんと10倍の5,000万円で申告している。前年分は当初申告の500万円に修正額3,000万円を加え、3,500万円の申告額だ。そうすると、前々年分の申告額が500万円であるはずがない。
ターゲットが逃げ切りを狙っていることは明らかで、異例の速さで4月1日に調査着手の宣言をした。すると案の定、仕事が忙しいことを理由に一切調査に応じない。
このまま逃げ切りを許すことは出来ない。そのため大規模な反面調査(取引先の調査)を行うことになったのだが、翌年2月までターゲットに会うこともできない膠着状態が続いた。
それでも次第に反面調査の圧力が効き始めたとみえ、当初の顧問税理士はマルサを恐れて逃げ出した。そして、新たに調査を熟知した国税OB税理士が関与することになり、局面が変わった。
OB税理士はマルサの影がちらつく筆者の経歴(マルサ在籍17年)を調べ上げ、このまま抵抗を続ければ強制調査に発展することを恐れていた。
期限直前の3月9日。突然、OB税理士が総勘定元帳を提示した。これが冒頭の税理士との対峙シーンだ。すると、想定どおり7年間で2億円を越える申告漏れが見つかった。
申告漏れに対する税額が8,400万円。重加算税額が2,700万円。合計約1.1億円におよぶ多額の追徴税額になった。さらに延滞税と住民税が加わる。
OB税理士は「担税力を超えている」とふてくされていたが、「正しく申告していれば住民税を合わせても50%の税率です。担税力は関係ありません」と言うと、苦渋に満ちた顔で筆者を睨みつけていた。
帳簿の提示がなければ、重加算税の賦課要件である『仮装・隠ぺい行為』の認定は困難だ。そして、帳簿がなければ推計課税に頼らざるを得ないのだが、推計課税は認定課税のため、7年間遡ることも重加算税を賦課することも難しい。
完全非協力者に対する税務調査のさまざまな問題点を浮き彫りにした事案で、その後の税務調査に大きな一石を投じ、税制改正に影響を与えたものと自負している。
納税者は強制調査の挙句に刑事罰を食らうより、早く調査を終わらせたいと考えた。一方、調査官は調査日数の制限と調査期限との戦いだ。そのギリギリの妥結点が修正申告額になる。
調査官が言う「マルサが来ると税金だけではすまないよ」は、困難事案を解決する“張子の虎のマルサの影”だ。
上田 二郎
元国税査察官/税理士
相続税の「税務調査」の実態と対処方法
調査官は重加算税をかけたがる
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