補助金受給の条件は「賃上げ」と「経営努力」
中小企業の賃上げをサポートする助成金は、「小規模事業者持続化補助金(第14回公募)」の「賃金引上げ枠」です。小規模事業者持続化補助金は、小規模事業者等の「販路開拓等」の取り組み、「生産性向上」の取り組みの経費の一部を補助する制度です。
ただし、賃上げさえすれば受け取れるわけではありません。一定の経営努力、つまり「販路開拓」または「生産性向上」の取り組みを行い、それに加えて「事業所内の最低賃金」を「地域別の最低賃金」より「+30円」以上引き上げた場合が対象となっています。
なお、小規模事業者持続化補助金には、「賃金引上げ枠」以外にも以下の5つの「枠」があります。
・通常枠
・賃金引上げ枠
・卒業枠
・後継者支援枠
・創業枠
このうち、「通常枠」は基本類型です。上述した「販路開拓」または「生産性向上」の取り組みを行うことが求められています。「通常枠」以外の「枠」は、「賃金引上げ枠」も含め、それぞれ、通常枠で要求される内容に「プラスα」の取り組みをした場合に、補助金の上限額がプラスされるものです。
いくら受給できるか
では、「賃金引上げ枠」の補助金はいくら受給できるのでしょうか。補助してもらえる対象となる額(補助率)と、補助上限額が設けられています。以下の通りです。
【「賃金引上げ枠」の補助対象額・補助上限額】
・補助対象となる額(補助率):費用の3分の2(赤字事業者は4分の3)
・補助上限額:200万円(「インボイス特例」対象事業者は250万円)
赤字の事業者も、補助対象となります。しかも、赤字の状態で賃上げするのは苦しいだろうということで、補助率が4分の3と高くなっています。
「インボイス特例」の対象となる事業者にはさらに50万円が上乗せされます。これは、消費税の免税事業者が「インボイス発行事業者」(課税事業者)へ転換する場合が対象です。
対象となる事業者の要件
持続化補助金の対象となる事業者は、「小規模事業者」です。直近過去3年分の「課税所得」の平均が15億円以内の営利法人(会社等)、個人事業主(商工業者)、収益事業を行う一定の「NPO法人」で、以下のように、業種ごとに「常時使用する従業員数」の要件が設けられています。
【小規模事業者の業種ごとの要件】
・商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く):常時使用する従業員5人以下
・宿泊業・娯楽業:常時使用する従業員20人以下
・製造業その他:常時使用する従業員20人以下
法人の場合は、他の資本金・出資金5億円以上の大きな会社から支配されていないこと(直接・間接に100%の株式を保有されていないこと)も要求されています。
補助対象となる「経費」の範囲
◆他の事業目的に転用できるものはダメ
補助してもらえる経費は、補助事業を遂行するのに必要な以下の経費です。
【補助対象となる経費】
(1)機械装置費
(2)広報費
(3)ウェブサイト関連費
(4)展示会等出店費(オンラインを含む)
(5)旅費
(6)開発費
(7)資料購入費
(8)雑役務費(臨時に雇用したアルバイト・派遣社員の費用)
(9)借料(リース・レンタル料)
(10)設備処分費
(11)委託・外注費(店舗改装など、自力では困難な業務を第三者に依頼した費用)
あくまでも、補助事業を遂行するのにかかった経費に限られます。したがって、自動車やパソコン等は対象外です。他の事業目的にも転用できるからです。
また、上記各費目のうち「ウェブサイト関連費」「設備処分費」には制限が設けられていますので、以下、解説します。
◆ウェブサイト関連費と設備処分費
まず、「ウェブサイト関連費」は、単独で申請できません。新しい商品・サービスの販路拡大という目的があって、そのために付随的にかかる費用にすぎないからです。また、上限も補助金交付申請額の4分の1まで、かつ、最大50万円までとなっています。
次に、「設備処分費」は、新たなサービスを行うために必要なスペースが不足している場合に、スペースを確保するために既存の設備を処分するのにかかる費用です。これも、「ウェブサイト関連費」と同様、付随的な費用にすぎないので、単独では申請できません。また、上限も補助対象経費総額の2分の1と低く設定されています。
受給のための手続き
小規模事業者持続化補助金を受給するには、申請して、審査を受けて採択してもらうことが必要です。また、申請は、「経営計画」を作成し、商工会議所から「事業支援計画書(様式4)」を発行してもらうなどの支援を受ける必要があります。その流れは以下の通りです。
(1)申請準備
(2)申請手続き⇒審査⇒採択・交付決定
(3)補助事業の実施
(4)実績報告書の提出⇒確定検査・補助金額の確定
(5)補助金の請求⇒補助金の入金
(6)事業効果報告
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