子どもが巣立ったため、広くなった家を手放して狭い家に引っ越すことを考えた60代の夫婦。「今どき親と一緒に住みたいなんて子供はいない」と思い込み新しいマンションに移り住むつもりでしたが、長男から思わぬ意見が返ってきて…。税理士である山中朋文氏(税理士法人bestax代表)が、思いもかけず二世帯住宅にすることとなった実際の相続事例について紹介します。
二世帯住宅にすることは税金対策にもつながる
実は、二世帯住宅にすることは相続税の節約にもつながります。
なぜ節約につながるのかというと、二世帯住宅の土地部分を小規模宅地等の特例に適応できる可能性が高いためです。小規模宅地等の特例というのは、一定の要件に当てはまる土地を相続した場合、相続税評価額を最大80%減額できるというものです。
「けどそれって、建物や間取りの制限などがあるんじゃ?」幹雄さんが質問をしてきました。
「結論から申し上げると、数年前より小規模宅地等の特例が適用となる二世帯住宅の間取りには制限はありません。玄関が別でも一緒でもどのタイプの二世帯住宅でも適用が可能になります」
「そうなんですね! だったらリフォームして二世帯にした方がお得じゃない! 玄関が一つの二世帯だとお互い気を使うからちょっとなぁ、と思うけど、玄関が別の二世帯ならいい距離感で住むことができそうじゃない!」と喜びながら話す奥様。幹雄さんも声には出さないものの、少し和らいだ表情で話を聞いてくださいました。
まずは次男に長男が家を引き継いでいいのかどうか話をしなければということになり、後日、次男にも長男の思いを伝えにいきました。話を聞いた次男夫婦は快く長男の思いを受け止めてくれ、晴れて幹雄さん夫婦と長男夫婦の二世帯で今まで住んでいた家をリフォームして、二世帯で住むことが決まりました。
翌年、仕事始めの日に事務所のポストを覗いてみると、幹雄さんの住所から年賀状が届いていました。そこには、奥様の字で「まさか孫と同居する日が来るとは思っていませんでしたが、孫が元気すぎてこちらもこれまで以上に元気になっています」と一言添えられていました。
相続に「万全」ということはなく、常にアップデート・メンテナンスが必要です。毎年夏休みにお伺いして、新年度の路線価・固定資産税評価を盛り込んだ最新の財産カウンセリングをしています。
税理士法人bestax 代表
山中 朋文
株式会社サステナブルスタイル
代表取締役
株式会社サステナブルスタイル代表。遺品整理の現場で残された家族の姿をたくさん見てきた経験から、明らかに「円満なご家族」と「不穏な空気のご家族」に分かれることに気がつき「円満な相続」を迎えるために何ができるだろう、と考えたことをきっかけに、2022年8月10日、23篇に及ぶ相続に関する実話を紹介する本「もう会えないとわかっていたなら」を出版。Amazonの日本文学(日記・書簡)カテゴリで1位を獲得。同書籍の抜粋転載記事は、Yahoo!ニュースのライフカテゴリでアクセス数1位を記録。
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円満相続ラボは「全ての家庭に、相続の『かかりつけ医』を。」をコンセプトに、相続終活の情報発信を通じて、争う相続を減らし円満相続に貢献することを目的としている相続終活のWebメディア。まだまだ相続について詳しくない方が多い中で「円満相続ラボ」を通じて、相続の「こんなはずじゃなかった」を減らしていくために日々情報発信を行なっている。
相続終活に関する情報提供はもちろんのこと、コラムを読んでくださった方が抱えている課題に合った相続の専門家の派遣も行っている。
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