ヘッドハンターが作成する「社長候補者」のリスト
今回は、ヘッドハンターである筆者らがクライアント企業から依頼を受けて、CEOやCOOを見つけ出すという案件を例に挙げ、ヘッドハンティングの「舞台裏」を紹介します。
ここでポイントになるのが、「50人のリスト」の存在です。
クライアント企業から依頼を受けて、ヘッドハンターが社長候補の人材を探すとき、多くの場合、最初に「ロングリスト」と呼ばれる候補者リストを作成します。そして、ここに掲載する人数が50人なのです。
この50人を基準(MAX)に、そこから絞り込みを行うことになる訳ですが、ということはつまり、この「50人のリスト」に入らないことには、そもそも「社長求人」のお誘いは回ってこないということです。
リストアップされる候補者の大半が「社長経験者」
ある化粧品メーカーで創業家退任に伴う事業承継の案件があったとします。そして、同社の命題が「後任の社長探し」であるという仮定に基づき、「50人のリスト」の内訳についてみていきましょう。
まず50人のなかの15人は同業、すなわち化粧品業界に近い企業での社長経験者です。そして次の15人は、扱っている商材は化粧品ではなく、もう少し広義の意味で消費されるもの、たとえば食品や健康食品、日用品などの業界で企業経営の経験がある人が占めます。
これで残るは20人となります。
そのうち10人は、同じ商材や一般消費財ではないけれども、ほかの業種も含む企業で豊富な社長経験を有しているネームバリューのある人材、いわゆる「ビッグネーム」が選ばれます。「この人、知ってる」となるレベルの人材です。
この10人は比較的固定化されており、さまざまな企業の案件でよく同じ人物がリスト上に登場します。
そして残る10人の内訳は、社長業は未経験ながらも「おそらく10年以内には台頭してくるだろう」と期待されている若手の部長クラス、管理職を務めているホープと呼ばれる人が5人、ヘッドハンターが独自に推薦するユニークな個性派が5人、となります。
最後の5人は、クライアント企業が想定する人物像の範囲には入っておらず、たとえば事業会社での経験は乏しいものの、コンサルティング・ファームにおいて化粧品関連の戦略策定・分析で非常に高い実績を挙げたとか、また良い意味での「遊び心」を持っている人です。
筆者らコンサルタントが面談してみると「革新的で面白い!」と思わされるような人で、その伸びしろに期待してリストアップすることになります。ほかの45人とは選定基準が少し違うということです。
つまり、50人のうち40人が「社長経験者」、5人が将来有望な「部長クラス」、残る5人は役職にかかわらず、ポテンシャルを基に選定する人材ということになります。
このようにして選定したリストを人物評価表と合わせてクライアントに提出し、協議を重ねて優先順位を付けていきます。そして、優先順位に基づいて50人に声をかけると、返事をくれるのが50%ほど。順次その候補者たちと面談を行い、タイミングや条件面が合致して挑戦する意志が確認できれば、クライアント企業との引き合わせに進みます。
上記のようなプロセスを経て、最終的に推薦まで行き着くのは50人のうち、5人ほどでしょうか。
クライアント企業はこの5人をさまざまな角度から評価し、複数回の交渉を重ねた結果、「当確」と「次点」の2人に絞り、オファーの準備に入っていきます。
以上が、CXOレベルのヘッドハンティングの舞台裏です。