ヘッドハンティングされて社長に就任――。華々しいサクセスストーリーですが、ヘッドハンターとクライアント企業の間で、候補者を選定するまでにどんなやりとりがなされているのかを知る機会はそうそうないでしょう。本稿では、半世紀以上にわたりヘッドハンティングを行ってきた東京エグゼクティブ・サーチで代表を務める福留拓人氏が、ヘッドハンターが重要視しているという「50人のリスト」について解説します。
経営層ヘッドハンティングの〈舞台裏〉…“引き抜かれて”社長になりたい人の登竜門となる「50人のリスト」とは?【現役ヘッドハンターが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

転職で社長をめざすにしても重要な「キャリアの棚卸し」

企業の規模や業種によって前提条件が変わるのはもちろんですが、同業または近い業種、あるいは異業種であっても過去に大きな実績を挙げた社長経験者がリストの4/5を占めていることをみてきた通り、社長を探しているクライアント企業は、過去に社長経験のある人に安心感を持つことが多いようです。

 

一方、社長経験がない1/5の候補者はヘッドハンティングの際、相当に魅力的なものをアピールして高い評価を得る必要があります。経営者レベルのヘッドハンティングは、社長未経験者にとっては非常に狭き門だということです。

 

筆者らは、この「50」という数字を非常に重要視しています。

 

対象者は潤沢だったとしてもリストアップに値する候補者が50人に達しない、あるいはそもそも人材市場に50人以上のリストアップ対象者が見当たらない場合は、確率論的に最終候補者に行き着かない可能性があるため、案件自体を断ることも少なくありません。

 

心意気があって実績も十分にあるものの「独立」するのではなく、伝統的な会社のプロフェッショナルとしてサラリーマン社長をめざす人は、若い頃からの自身の能力やキャリアや経験が、今回紹介した「50人のリスト」に該当しているかどうか、キャリアの棚卸しを行いながら見極めていく必要があります。

 

転職を前提としなくても、定期的にキャリアコンサルタントやサーチ・ファームのスタッフと情報交換を行い、自身の立ち位置を明確にし、戦略的にキャリアを見直す機会を設けることが重要といえそうです。