“自称親戚”の女性「土地を売りたいから署名捺印して」…都内在住の36歳・会社員が知らぬ間に「東北の土地の所有者」になっていたワケ【司法書士が解説】

“自称親戚”の女性「土地を売りたいから署名捺印して」…都内在住の36歳・会社員が知らぬ間に「東北の土地の所有者」になっていたワケ【司法書士が解説】
(※写真はイメージです/PIXTA)

都内在住のAさん(36歳・男性)はある日突然、親戚を名乗る女性から「土地を売りたいから署名捺印してほしい」といった内容の電話を受けました。司法書士法人永田町事務所の加陽麻里布氏は、こうした「知らないあいだに自分が土地の所有者になっていた」というケースは多々あるといいますが、原因はどこにあるのでしょうか。事例をもとに、予防策と対処法についてみていきましょう。

寝耳に水…知らぬ間に土地の所有者になっていた!

相続においては、「知らない間に親戚などで相続が発生していて、自身がいつの間にか土地の所有者になっていた」といったケースが多々あります。事例をもとにみていきましょう。

 

【相談者】東京都内で働く会社員Aさん(36歳・男性)

 

Aさんの実家は東北の田舎にあり、古くから続く家系です。Aさんの父親はその家の長男でしたが、若いとき家出同然で東京に出てきました。親戚付き合いは皆無に等しく、父に兄弟がいるのかもわからないほどです。

 

そんななか、Aさんの家にある日突然、1本の電話がかかってきました。親戚を名乗る女性は、開口一番こう言います。

 

「土地を売りたいから、署名捺印してほしいんですが」。

 

聞けば、Aさんの父親の妹だといいます。父親は10年ほど前に亡くなっていますが、知らぬ間にAさんが本家の土地の所有者の1人になっていたそうなのです。Aさんはもうわけもわからず、そこで初めて実家に戻り、一部始終を知ることとなりました。

 

いったいどうしてこのようなことが起こってしまったのでしょうか。

勝手に登記される「2つ」の原因

上記のように勝手に登記されてしまうケースというのは、事件性がある場合を除き大きく分けて2つあります。「法定相続分による登記がされた場合」と「代位登記がされた場合」です。

 

1.「法定相続分」による登記がされた場合

民法上、相続人のなかの1人から法定相続人全員の名義で法定相続分どおりに手続きを行うことができると規定されています(=「相続人の保存行為」)。

 

相続登記手続きは、①まず被相続人(亡くなられた方)の出生から死亡までの戸籍謄本をすべて集める②相続人を確定(特定)する③遺産分割協議を成立させる、必要書類を揃える……と多くのステップを踏む必要があり、大変労力がかかります。

 

この際、相続人のうち誰か1人でも協力的でない人がいれば手続きが滞ってもちろん長期化しますし、感情的にも経済的にも対立すれば手続きにもう終わりが見えない……というのが現状です。

 

こうなってしまうと「遺産分割協議」ができないため、「遺産分割協議ができないなら、法定相続どおりに登記してしまえ」ということができてしまいます。つまり、遺産分割協議書成立の有無に関係なく、法定相続分どおりで相続人の1人から相続登記申請ができてしまうということです。

 

したがって、自分が知らないところで他の相続人が法定相続分に沿ってみんなの分を登記してしまうということはありえるお話です。

 

ただし、このようなことが発覚したあとであっても、遺産分割協議がまとまった(=誰か1人が当該不動産を承継することが決まった)場合には、他の相続人の持ち分のすべてを移転する登記を行うことができます。

 

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