使えるものは忘れず使う!
じてこ先生SASA「では、しきり直します。給与収入から給与所得控除を引くと、給与所得になります。次のステップで、給与所得から所得控除を引いていくのが、所得税計算の順番でした。この所得控除こそ、私たちの個別事情を考慮してくれる部分になります。」
質問者「たとえば、奥さんや子供を扶養しているとかですね。」
じてこ先生SASA「そうです。配偶者控除や扶養控除などが代表例です。ほかにも障害者控除や勤労学生控除、寡婦・ひとり親控除、配偶者特別控除などがあります。これらの控除は、その人の個別事情に応じて使えるか使えないかが決まる控除なので、「人的控除」と呼ぶこともあります。ちなみに、誰でも使える基礎控除も人的控除に分類されます。」
質問者「あとは、国民健康保険や年金なんかを払ったりした金額を差し引けるのも、この所得控除ですか?」
じてこ先生SASA「その通りで、ご指摘のものは社会保険料控除ですね。ほかにも生命保険料控除や地震保険料控除などの保険関係、医療費控除、iDeCoに関係する小規模企業共済等掛金控除、ふるさと納税の寄附金控除などもここです。
人的控除に対して、『物的控除』と呼ばれます。こうしたさまざまな所得控除によって、個々人の担税力に応じた課税となるように工夫しているために、結果として複雑な税の仕組みになっているわけです。」
質問者「なるほど、どうやら本当に、政府の陰謀や意地悪ではなさそうですね……。人によって家族の扶養状況も違うし、家族が増えれば食費や保険などの支払い額も増えますしね。そうした違いに配慮してくれているのかぁ。」
じてこ先生SASA「そういうことです。なので、自分が利用できる所得控除があれば、忘れずに全部利用することが損をしないためには重要です。所得控除が利用できれば、多かれ少なかれ税金は減りますから。」
質問者「忘れない。絶対。」
じてこ先生SASA「で、そのように給与所得から各種の所得控除を引き算して課税所得を出したら、あとは事前に決められている税率表から対応した税率を探し、かけ算して税額を計算する、という流れになります。
税率については、課税所得が増えれば税率も大きくなっていくように設定されています。4,000万円以上で45%になると、それ以上は増えませんが。」
質問者「税金の仕組みが複雑すぎて、何か裏に隠された意図でもあるのかと思っていましたが、お話を聞くと、むしろ個々人の事情にていねいに配慮するために複雑になっている、ということがわかりました。意外に人にやさしい仕組みだったんですね。よくわかりました。ありがとうございます。」
まとめ
・所得税では、同じ年収でも家族状況が違ったり、支出額が違ったりと各個人の税金を負担する力(担税力)が異なるため、その能力に応じた控除額を設定するためにさまざまな所得控除の制度が用意されている。そのために、どうしてもある程度計算が複雑になる。
・所得控除は、使えるものがあるなら忘れずに使うようにするのが節税のキホン。
・消費税は個々人の事情を配慮しない税目である。超高齢化社会に対応するために導入されたが、経済活動へのデメリットが大きいとも指摘されている。
・税制の中心である所得税では、所得が高ければ高いほど税率が高くなる累進課税制度が採用されている。