◆問題点2|女性の社会進出を妨げている
第二の問題点は、「壁」があるせいで実質的に女性の社会進出が妨げられているということです。
「壁」の制度において念頭に置かれているのは、主に、扶養を受けながらパート・アルバイトとして働く「主婦(夫)」です。なぜなら、「壁」の年収では家族を養うことはおろか、一人で食べていくのも事実上不可能だからです。実質的な手取りが減ることをおそれ、「壁」を意識して労働時間をセーブすると、必然的に活躍の機会は減ります。
2014年3月、安倍晋三首相(当時)は「第1回経済財政諮問会議・産業競争力会議合同会議」において、税制・社会保障制度について「女性の就労拡大を抑制する効果をもたらしている」と明言しました(議事要旨P.13参照)。これは、明らかに「壁」を念頭に置いたものです。
「老後不安」「年金不安」が指摘され、物価上昇で国民生活が苦しくなっている状況で、「壁」を気にして労働時間を抑える経済的余裕のある人は限られているとみられます。また、家計を楽にすることにもスキルの向上にもつながらず、本人の首を絞めることになりかねません。
さらに、所得獲得活動を抑制することは、国にとっても税収の減少につながります。
政府の「壁」への対応は?
近年、政府は、「壁」の制度の見直しに着手しているように見えます。前述したように、「106万円の壁」を2024年10月から「従業員数50人超」の企業にまで拡大しました。
ただし、その主な目的は、社会保険制度(公的医療保険制度、公的年金制度)の維持にあると考えられます。先ほど挙げた「壁」の2つの問題点(最低賃金引上げ・物価上昇に対応できない、女性の社会進出の妨げになっている)に正面から対処するためとは考えにくいのです。
その証拠に、「壁」を超えたことで新たに社会保険料の負担が発生するケースについて、国が企業への助成を行うことになっています。社会保険料は雇用者と労働者が半分ずつ負担するしくみになっていますが、企業の分だけではなく、労働者の分も負担する案が検討されているもようです。
これは結局、形を変えた「壁」を温存することを意味します。「壁」が抱える2つの問題点は、いずれも何らかの形で対処しなければならないものです。
荒川 香遥
弁護士法人ダーウィン法律事務所 共同代表
弁護士
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