(※写真はイメージです/PIXTA)

いま、人手不足で経営が立ち行かない企業が増えています。東京商工リサーチの調査によると、2023年1〜7月の人手不足関連倒産は83件で、前年同期比159.3%増という、驚くべき結果が出ています。本稿では、社員数50名の新聞販売店を23年間経営した経験を持ち、多くの企業の経営支援に携わる米澤晋也氏が、資金力のない中小企業が陥るリスクや、人手不足を解消する実務を解説します。

深刻な人手不足の企業が増加

「ようやくコロナ禍が一段落して消費が戻ってきた。さてこれからだ」と再起をかけて頑張ろうという時に、今度は人手不足で経営が立ち行かない企業が増えています。

 

東京商工リサーチの調査によると、2023年1〜7月の人手不足関連倒産は83件で、前年同期比159.3%増という、驚くべき結果が出ました。内訳は、「求人難」が35件(前年同期20件)、「人件費高騰」が29件(同ゼロ)、「従業員退職」が19件(同12件)となっています。

 

この状況に追い討ちをかけるのが、最低賃金の引き上げです。最低賃金の全国平均が、初めて1,000円を超えて1,004円になります。これまで以上に賃上げ機運が高まり、人材確保の競争が激化することが予想されます。

 

特に深刻なのは、資金力のない中小企業です。

安易な賃上げは人手不足を解消しない、ばかりか…

人手不足に陥ると、焦りから、間違った対策を取ってしまう危険性があります。効果がないどころか、より窮地に追い込まれてしまいますので、細心の注意が必要です。

 

間違った対策の典型は、安易に募集賃金(初任給)を引き上げてしまうことです。それをすると、既存社員の賃上げを実施せざるを得なくなります。

 

東京商工リサーチの調査では、「人件費高騰」が倒産の理由として突出しています。その背景には、賃金の引き上げが大きく関係していると推測します。

 

安易な募集賃金の引き上げは、会社の将来性や、働き甲斐よりも、待遇面に動機が偏った人を集めてしまうという弊害もあります。そういう人は、ちょっと仕事が大変になった時などに、より待遇の良い企業が見つかると簡単に転職してしまいます。

 

自社の待遇が生活に困るほどに低かったり、労働環境が劣悪な場合は、一刻も早い改善が必要ですが、一定水準を超えていれば、改善の効果は限定的です。待遇や労働環境は、改善された時は嬉しいものですが、すぐに慣れて「あって当たり前」と思われてしまう傾向が強いのです。

 

人手不足解消の王道は、従業員が「この会社で働き続けたい」と思えるような将来にわたる魅力をつくり、「出」=退職を少なくすることです。

 

そうしないと、ザルで水をすくうようなもので、状況は一向に改善されません。後述しますが、出を少なくすると、「入り」…採用を増やす方策も見えてきます。

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