(※画像はイメージです/PIXTA)

ガソリン代高騰が続いているのを受け、2023年8月30日、政府・与党が、9月に期限を迎える「燃料油価格激変緩和補助金」を10月以降も延長する方向で調整に入りました。一方、鈴木財務大臣は8月29日に、ガソリン1リットルあたり53.8円の「ガソリン税」を引き下げる「トリガー条項」の発動を否定しました。トリガー条項とは何か、なぜ発動させられないのか、解説します。

ガソリンを買うと36.8%が「税金」!

まず、前提として、ガソリン1リットルあたりの価格には、以下の税金が含まれています。

 

【ガソリン1リットルあたりの価格に含まれる税金】

・ガソリン税:53.8円(揮発油税48.6円、地方揮発油税5.2円)

・石油石炭税:2.04円

・温暖化対策税:0.76円

 

2023年8月28日時点のガソリン価格は1リットル185.6円なので、うち30.5%をガソリン税等の税金が占めている計算です。それに加え、ガソリン価格全体に、10%の消費税がかかることを考慮に入れると、実際に支払う金額の36.8%を税金が占めていることになります。

ガソリン価格は「補助金」で抑えられているが…

ガソリン価格は、2022年1月からの「燃料油価格激変緩和補助金」によって抑えられてきました。これは、「石油元売事業者」と「輸入事業者」を対象とした補助金で、価格上昇を抑える原資に充ててもらうためのものです。

 

資源エネルギー庁は燃料油価格激変緩和補助金のHPで、2022年1月からの発動効果を公表しています。それによると、抑制幅の最大は2022年6月20日と同年7月11日の「1ℓあたり41.9円」です(2022年6月22日は215.8円→174.9円、同年7月11日は214.6円→172.7円)。

 

補助金による価格の抑制幅よりも、ガソリン価格に含まれる税金の額のほうが大きいのです。しかし、実は、補助金以前に、法律上、ガソリン税を抑制するしくみが用意されています。それが「トリガー条項」です。

「トリガー条項」とは

「トリガー条項」は、3ヵ月連続で平均小売価格が1リットル160円を超えた場合に、自動的に税率が1リットル28.7円に引き下げられるというものです(なぜ1リットル28.7円なのかは後述します)。もし、トリガー条項が発動すれば、ガソリン価格が1リットルあたり25.1円引き下げられます。

 

2023年8月現在、ガソリン価格が1リットル160円を大きく上回っています。本来なら、この「トリガー条項」が発動するはずの場面ですが、発動していません。実は今回だけでなく、過去にもトリガー条項発動の要件を満たしたことはありましたが、これまで一度も発動されたことがありません。なぜでしょうか。

 

その原因は、2011年3月に発生した東日本大震災にあります。復興財源を確保しなければならないということで、特別法によってトリガー条項が凍結されたのです(「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律」44条)。

 

最近、「今こそトリガー条項の凍結を解除すべきではないか」という意見が多くみられます。ただ、凍結すべきか否か、どちらの見解に立つにしても、知っておかなければならないのは、現在の税率「1リットル53.8円」とトリガー条項が発動した場合の税率「1リットル28.7円」がどのような関係にあるのかということです。

 

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