いよいよ新NISA始動…公認会計士が警告する「アクティブファンド」「債券ファンド」の落とし穴

いよいよ新NISA始動…公認会計士が警告する「アクティブファンド」「債券ファンド」の落とし穴
(画像はイメージです/PIXTA)

国民の関心が高まる「NISA」ですが、購入者の方のなかには、せっかくの投資枠を生かしきれなかったり、余計な信託報酬を支払う羽目になったりするケースが散見されます。せっかくの投資枠を最大限生かすためにも、失敗しがちなポイントについて学びましょう。FP資格も持つ公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。

大失敗1:「アクティブファンドの長期の勝率を確認しない」

生徒:先生、NISAで選べるファンドのうち、「インデックスファンド」は、日経平均株価やTOPIX、S&P500といった指数に連動するように設計されたファンドである一方、「アクティブファンド」は、指数を上回るか、指数に捉われずに高いリターンの獲得を目指すファンドですよね。アクティブファンドの長期的な運用成績がなぜ悪くなりがちなのか、くわしく教えていただけませんか。

 

先生:まず最初に、インデックスファンドとアクティブファンドの勝ち負けの実績について、実情を理解しておきましょう。あるインデックスファンドの勝率のデータを追ってみると、米国株式では、運用期間1年の時点であってもインデックスファンドの勝率が65%、アクティブファンドの勝率が35%になります。その後の勝敗は明らかで、運用期間10年になると、インデックスファンドの勝率が87%、アクティブファンドの勝率は13%です。

 

生徒:なんと!

 

先生:長期の運用となると、アクティブファンドの勝率は著しく下がってしまうことがわかります。

 

生徒:指数を上回る運用成績を目指したアクティブファンドが、現実には、インデックスファンドを下回る運用成績しか出せないというのは、なんだか悲しいですね。

 

先生:そうですね。ただし「アクティブファンドは絶対にダメ」といっているわけではありません。アクティブファンドは、ギャンブルと同じように「上がるか、下がるか」という楽しみを味わうことができますから、それはそれで面白いものではあります。私も原油先物ファンドを追いかけて、スリルを楽しんだことがあります。

 

生徒:では、インデックスファンドを売買するのはどうでしょうか。上がりそうなときに買って、下がりそうなときに売れば、常に利益だけ得られて、損失を防ぐことができますよね?

 

先生:それはアクティブファンドと同じ考え方ですね。自分でアクティブに投資しても結果は同じです。上がる前に買う、下がる前に売ることができれば必ず利益を獲得できますが、それを実際にやるのは至難の業だといえます。

 

生徒:そうですよね…。

 

先生:S&P500の毎年のリターンの推移を調べてみまししょう。ほとんどがプラスだとしても、リーマンショックのときのように、マイナス40%になる年もあるのです。これを見て「投資は怖い、やめておこう」と思う方もいるかもしれませんが、こういった「短期的なマイナス」というリスクを我慢するかわりに、「長期的なリターン」が得られるということを理解する必要があるといえます。これはとても大切です。

大失敗2:「貴重な非課税枠で〈債券ファンド〉を買ってしまう」

生徒:価格の変動幅を抑えるために、資産の一部を債券ファンドに投資する、というのはどうでしょう?

 

先生:それはよくある失敗例のひとつです。国債などの債券は、高齢者など価格変動を抑えるべき人にとって必ず対象とすべきものですが、せっかくNISAの貴重な非課税枠を使うなら、値上がりが期待できる株式ファンドだけにしたほうがよいでしょう。もし債券に投資したいなら、特定口座で運用することをおすすめします。それに、信託報酬を取られる債券ファンドを買う意味はあまりなく、信託報酬ゼロの国債を買っておけばそれで十分だといえます。米国債などはとくにリターンも高いので、債券を買う際はおすすめです。

 

生徒:バランスファンドといった商品はどうでしょう? たとえば、eMAXIS バランスファンドだと、株式と債券でちょうどよく配分されているように思えます。eMAXIS Slim S&P500まで含まれているような気がしているのですが…

 

先生:バランス型であっても、債券に投資するファンドを買う必要性はありません。たとえば、eMAXIS バランスファンドだと、信託報酬率0.55%だけでなく、換金するときの留保額として0.15%の手数料が取られてしまうので、長期的なリターンは明らかに悪くなるといえます。しかも、eMAXISという商品は、eMAXIS Slimとは全然違うので勘違いしてはいけませんよ。

 

生徒:えっ?

大失敗3:「eMAXIS Slimではなく、eMAXISを買ってしまう」

生徒:同じeMAXISでも違うというのはどういうことですか?

 

先生:eMAXISシリーズとは、三菱UFJ国際投信が販売しているファンドですが、店頭販売するeMAXISシリーズと、インターネット販売するeMAXIS Slimは分けていて、信託報酬に大きな差をつけているのです。いま1番人気があるのは「スリム」が付いているeMAXIS Slimのほうです。たとえば、同じ全世界株式のインデックスでも、eMAXIS Slimの信託報酬は0.11%ですが、eMAXISシリーズの信託報酬だと0.66%と、6倍もの差がついているのです。

 

生徒:そんなに信託報酬が違うのですね! しかし、同じインデックスファンドであれば、信託報酬の安いeMAXIS Slimを買えばすむのに、なぜeMAXISシリーズを買ってしまう人がいるのでしょうか?

 

先生:これもよくある間違いの代表例ですが、銀行員に紹介されたグループ証券会社でNISAを始めてしまうからなのです。

 

生徒:というと?

 

先生:対面で営業担当者と話をする銀行系証券会社の場合、NISA口座を開いたとしても、信託報酬の安いeMAXIS Slimは取り扱われておらず、信託報酬の高いeMAXISシリーズを買うしかありません。これは、対面販売の人件費がかかってくるので仕方ないことだといえます。ちなみに、三菱UFJ国際投信のグループ会社である、三菱UFJモルガンスタンレー証券でNISA口座を開いても、eMAXIS Slimを買うことができないから注意が必要です。

 

生徒:なるほど…。よく調べるようにします。

 

 

岸田 康雄
国際公認投資アナリスト/一級ファイナンシャル・プランニング技能士/公認会計士/税理士/中小企業診断士

 

★アクティブファンド、債券ファンド、eMAXIS を買ってしまった大失敗についてはこちらをチェック!

【新NISAの悲劇(後編)】長期積立投資で大失敗?アクティブファンド、債券ファンド、eMAXISの隠された落とし穴に注意せよ!

 

★信託報酬の高さを無視したNISAの大失敗についてはこちらをチェック!

【新NISAの悲劇(前編)】長期積立投資で損失?信託報酬とアクティブファンドの罠に注意せよ!

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